持続可能な社会を考える 「ESDの視点を取り入れた環境学習の推進」アウトプットからアウトカムへ

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こんにちは、ゆうあいセンターSDGs&CSR相談員 小桐です。

今回は、岡山市のESDカフェ、対面での開催を再開した第2回目で話された 「ESDの視点を取り入れた環境学習の推進」 アウトプットからアウトカムへ に関する 情報提供をさせていただきます。

●ゲストスピーカーとテーマについて
このテーマについて話題を提供されたのは、環境カウンセラーズ岡山事務局長の中平徹也さん。環境学習センターアスエコの初代所長、津山圏域クリーンセンターリサイクルプラザ所長、岡山県地球温暖化防止活動推進センター事務局長等を務められました。岡山県民の環境への取り組み意識の醸成をリードして来られ、今でも環境学習出前講座の講師としても活動されています。
今回の話題提供の場である ESDカフェの初代 カフェマスターでもあることを付け加えておきます。

環境学習という言葉はお堅い感じがして、EUと比較すると日本人は何故か敬遠や無関心の人が多いという残念な傾向があります。その環境に対する意識の壁を取り払い、自分事としてとらえ、簡単にできることから始めようという空気を醸成をするために始まったのがESDカフェです。一つのテーマをもとに、関心ある人たちがお茶を飲みながら、ほんわかした雰囲気の中で意見交換をする場としてこれまで行われてきました。当日会場には13名の中平さんの旧知の方やファン?それに若い大学生と幅広い年代の方々が集まりました。WEBでも数名の参加者がありました。

●世界を訪ねて
冒頭、自己紹介も兼ねて、1回を除いて、すべて自費で世界各地を訪ね、環境の状況を見たり、体験したりした国々を紹介されました。

 『百聞は一見に如かず』 環境問題を、特に自分事としてとらえるためには、私は人の話を聞いたり、間接的な情報を入手したりするだけでは、不十分と考え、現地・現場を見て回った。現地に行けばいろいろな新しい情報が入るんですと。座右の銘に近いお話からスタートしました。
各国で撮影した写真を紹介しながら話は進んでいきました。

最初に訪問した国はツバル。太平洋にある島国、温暖化で国土が海に沈み国がなくなるといわれています。そこで暮らす住民から聞いた話は、島はすぐには沈まない。でも将来世代に沈むかもしれない。
中平さんはここでも環境学習会を実施。住民からこんな意見をもらいました。ツバルはCO2を出すような暮らしをしていない、自然と共に暮らしている。先進国がCO2を排出している。先進国の人達は、私たちに何をしてくれるのか? この言葉に胸を痛めたそうです。自分に何ができるかを考え、『日本に帰って日本人がCO2を減らす努力ができるように環境学習を推進する』と誓いました。

2番目の国は、モンゴル。国の南半分にゴビ砂漠が広がるこの国では、砂漠化が問題となっています。スライドに映った砂漠の中のパオ型の建物はホテルでした。周囲では羊や山羊の放牧が行われています。これまでも放牧は行われてきたのですが、その数が増えたので砂漠化が一層進んだとのこと。
山羊は、草の根まで食べるので食べつくすとそこは緑がなくなり、水がなくなり、砂漠化します。その山羊の種類はカシミア山羊。皆さんもご存じだと思います。日本や世界のアパレルが、セーターの原料としてたくさん買っています。冬になるとセーターのCMが流れますが、その陰でモンゴルはどんどん砂漠化して深刻な状況にあるのです。住民が山羊のセーターを着ることはありません。(以下は筆者の追加情報:まさにガーナの人がカカオ豆から作るチョコを食べないのに、換金作物として育てているのと同じ状況なのです。)
※以下( )の文章は筆者の追加です。理解を深めていただく意味で加えています。

3番目は欧州、環境の先進国ドイツのフライブルグという都市。市街地の中心部への車の乗り入れが難しい環境を整備し、公共交通機関の利便性を高めて、コンパクトな街づくりをしています。車で行くより町の中心部に行くのは便利で早く安価なのです。交通における優先順位が決まっていて、歩行者>自転車>公共交通機関の順です。電車に自転車を乗せても良いことになっています。乗り放題の交通パスがあります。公共交通機関は赤字です。(でも行政がこれは環境だけでなく福祉側面からも重要と考え、赤字でよいと判断しているのです。EUでは、多くの国がこの考え方を採用しています。)

(日本の公共交通機関の競争や人口減少で鉄道路線廃止が検討される現状とは大きく異なるのがわかります。社会の在り方に関するモノサシを変えれば実現できるのです。)また、街中に大きなショッピングセンターはありません。家の近くに店があるからそこで買えばいいのです。エコロジー、エコノミー、家の近くに仕事があるという社会体制です。
(日本は第2次世界大戦以後アメリカの属国となり、すべてアメリカを手本にした国づくりを進めてきました。世界で一番環境面での悪影響を与えているのはアメリカ人、それをまねしてひたすら後を追う日本人。ぼちぼち社会づくりの観点を見直し、持続可能な地域づくりに本格的に取り組む必要があるのではないでしょうか? この話は中平さんの最後の話に繋がっていきます)
産廃は燃やして熱供給源としていたり、飲料ボトルはデポジット制で、容器を返却すればボトル代が返ってきます。(昔は日本でもビール瓶1本5円、一升瓶1本10円のデポジット制が導入されていました。PETボトルの普及によっていつのまにか自然消滅したようです。)

4番目に紹介された国は、世界一幸せな国ブータン。国民の98%が幸せと感じて暮らしている国です。
街中がきれいでした。でも大きなごみステーションはごみでいっぱいだったという事実も。SDGsの目標12番にも廃棄物削減が掲げられていますが、ごみ処理問題はどの国にも共通のようです。スライドで紹介された写真には、1個信号機が見えましたが、後で取り除かれたそうです。
電線は、地中に埋められています。毎年ヒマラヤから鶴が飛来するので引っかからないように配慮しました。(人間が中心でなく、自然と調和した暮らしを国民が求めているのです。)
ブータンのアンケートでは、他人がニコニコしていると幸せと感じる人がとても多いそうです。だから、他人が幸せになるためにどうしたら良いかを考える。そして、自然を守らないと伝統文化が守れないと国が考えています。(事実、国土の80%は開発してはいけないことになっています。)道路一つを造るにも、住民の意見を聞いて判断するのだそうです。

●環境学習と社会の変化
ここから環境学習の話へと移っていきます。中平さんが津山圏域クリーンセンターに勤務しているときの出来事、ここには、施設見学に多くの小学生がやってきます。全ての学校が、来て・見て・聞いて・感想文を書いて帰っていきます。ごみを減らすために何ができるかを子供たちは考えるというのが学校教育における社会科学習です。この方法で見学を終えた小学生は、「機械がすごかった」などの感想を書いていました。 これではなかなか自分ごとになっていかない。そう感じた中平さんは、参加型で価値創造型の見学方式に変えました。そうしたところ感想文が劇的に変わりました。「ごみを減らすように努力したい」など自分事としてごみの事を考えるようになったのです。
見学後、一番熱心に取り組んでくれた小学校では、模造紙に大きな木を書いて、自分たちがエコ活動で取り組んだことを実施するたびに書き込みをしました。取り組めば取り組むほど、木にたくさんの実がなりました、kon学校での継続したこの取り組みが、子どもや家庭の変化を生んだと言います。

このように環境学習は一定の成果をあげ、結果も残せました。ところで、社会は変わったのでしょうか?と問いかけた中平さん。ワークショップに移るための問題提起であり、残念ながら悲しい事実です。
種を蒔き、木を育て、やがて実をつける。それには時間がかかります。環境でいえば実をつけるとは、人々の行動が変わることです。 
環境の事を知らない人には、知っている人に、知っているには、行動する人に、そして 行動している人には、その時間を増やしてもらう。 このサイクルを確立し、継続させたいが、人は動かず、実がならないジレンマを今でも感じています。他人事をいかに自分事にするかが重要と感じていますとの言葉に、環境学習の役割は、それぞれのポジションの人のステップアップのきっかけであり、粘り強く続けることの大切さを筆者も改めて感じました。

アフリカ タンザニアでは、貧富の差が大きく、貧困な環境にある家庭は、山から木を切って燃料にしたりして暮らしています。長子のみが学校に行けますが、2番目以下の子供は学校には行けず、働きます。多くの子供が教育を受けていない中、人口が10倍となり、伐られる木も増えました。伐った後の植林という知識も行動もない中、山から木がなくなり、水がなくなり、湖がなくなるという事態にまで発展してしまいました。教育がないと国土が滅び人も滅びるのです。

●環境学習が実をつけるには?
実がなるための自由なアイデアをグループワークで考えてみましょうと6~7人のグループに分かれ、楽しく活発な意見交換が行われました。ワーク後各グループから2人が代表としてアイデアを発表しました。『個人の取組には限界があるため、企業を変える』や『お金:環境に良いものは高い、購買意欲が出るようにお得感の出る活動を』という意見や『協力できる場づくり』『選挙に行って社会を変える』といった案が出されました。

この意見をベースに、次のグループセッションでは、(選挙に行かない)若い世代はどうしたら選挙に行くようになるかについてさらに柔軟な発想でアイデアを出し合いました。最も多かったのは、『WEB投票』。 若い人ほど人生が長いので、高齢者は1票でも若年層は3票など票の重さを変え、世代別の人口格差による投票得点を世代間で同じ重さとなるような配分にするというアイデアも出ました。

みんなが考える場に参加して、意見交換をすることで、新しいアイデアや行動につながっていくことはワークショップではいつも感じることです。どうすればワークショップ蒔かれた種は実を結ぶのでしょうか またまた、アウトプットからアウトカムへのシフトの難しさを感じました。

●筆者のつぶやき
環境での人々の行動変容を促すには、『事実を伝え、今の暮らしの延長先の未来がどうなるかを共有し、一緒に考え、自分事としてとらえる事と同時に、今だけ、ここだけ、自分だけが幸せであればよいという価値観の転換』が必要です。
これまで私たちは、安心・安全・便利・快適を強く追い求め、自分だけ、自分の家族や関係する組織の幸せだけを守ろうと行動してきました。その結果がSDGsに示される169以上の課題を生み出しました。
自分の周りだけのことを考えた幸せは、本当の幸せではなく、幸せのようなものです。永続しません。
ブータンの国民のように自分以外の命が幸せであれば自分が幸せという価値観が共有される社会に日本が戻れるように、持続可能な社会を目指して、環境学習指導者の一人として、環境学習という切り口でも粘り強く行動しようと思いを新たにした、カエフェタイムでした。

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