持続可能な社会を考える 「幅広い世代で取り組む瀬戸内海ゴミ問題」

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今日は、こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今回は1月に続き、瀬戸内海の海ごみ問題についての取り組みを紹介します。
前回は、瀬戸内海のゴミがどのようにして海へ流入しているかについての調査報告とその解消に取り組む団体の紹介でした。今回は、前回とは違う主体の方々の海ごみ削減に向けた活動を紹介します。

2月6日に 海や川のゴミ問題について考える「SDGs海川フォーラム2022」が開催されました。主催は岡山ESD推進協議会、岡山市です。このところ海ごみに関してのイベントが頻繁に開催されている感じがします。それは、なぜ?でしょうか

直接的な背景には、4月1日施行される「プラスチック資源循環促進法」に対応する動きがあるように感じます。陸のゴミが川を通って海へ流れ、海に住む色々な生き物が、誤飲したり、小さく分解されたマイクロプラスチックごみに付着したインクなどの化学物質が、それを摂取した生物のホルモン分泌に悪影響を与えたり、さらに食物連鎖により生態系全体に広がる影響を阻止しようとする
ことを狙っている法律です。いずれ、人間の健康問題にもつながる海ごみをなんとか減らそうという取り組みが広がるのは当然と言えば当然です。合わせて温室効果ガス削減の意味もあります。

プラスチックの使用料を減らし、リユースやリサイクルを増やして、資源の有効活用を図り、自然界への人工物の流出を減らし、環境負荷を下げる。そのためには、企業を中心に設計、製造、使用、廃棄、リサイクルというサイクルの中で、資源循環についても効果的な対策を実施するというものです。

SDGs的に考えれば、12作る責任・使う責任、14海の豊かさを守る 15陸の豊かさを守ることに加え、9産業と技術革新の基盤をつくることや17パートナーシップにもつながります。当然企業だけでなく、消費する立場の市民にも広く啓蒙する4質の高い教育をみんなにも当てはまってきます。
如何に行動する人を育てていくかが重要です。

コロナ禍の影響もあり、多くの人が密になっての行動は避けるべき状況が続いていますが、これからご紹介する取り組みは課題を自分事として捉え、活動してこられた皆さんのものです。
是非一緒に行動できる仲間となりたいものです。

冒頭、話題提供として、岡山県環境カウンセラー協会 中平事務局長(元アスエコ所長)から以下の話がありました。
・海の独り言『100年前瀬戸内海は生き物がたくさんいて(生物多様性)、水温もまだ低かった(地球温暖化の影響が殆どなかった)、60年くらい前から経済優先の社会になり、ゴミがいっぱい出るようになり、プラスチックのゴミが増えるわ、海がどんどん埋め立てられて干潟・砂浜が減り生き物の住む場所が減っていった。やがて地球の温度が上がり、水の温度も上がり、生き物が棲み辛くなっている。』

温故知新 過去から学ぶことは今の私たちにとって重要 。過去とは、持続可能な暮らしを営んでいた時代の価値観(社会・経済・自然環境・くらし)を調べ、理解すること

くらしの大きな変化が起きたのは昭和30年代中盤以降(1960年~)。当時は家庭の電気製品といえば、あってもテレビくらい(冷蔵庫、電子レンジ、エアコンはない) プラスチックもなかった。
今は、世界の人口が70億人を突破し、モノは溢れ、家電に囲まれた生活。 家にモノがあrうことが幸せなのだろうか?  60年前は持続可能なんて考えなかった。

モノがあふれ、便利な生活をすることで、大量のエネルギーが必要となり、地下資源含め様々な資源の消費をした結果 温室効果ガスのCO2は増え、ゴミも増え、資源は枯渇する状態となっている。 環境に関する問題が多くある。なぜ、解決しないのか?

今日のテーマはゴミ   登壇者のグリーンパートナーさんと一緒に牛窓沖でゴミの調査を行なった結果、海鳥の胃の中からプラごみが見つかった。イカナゴの漁獲量が減ったなどの減少もわかった。

リサイクルには限界がある。まずは、元栓を締めること。即ち使う量を減らすこと、使わない方向へシフトしていくこと。2022年4月からプラスチック資源循環促進法が施行される。
便利・快適だけを追い求めた結果持続不可能な社会になっている。
30年前になかったものが、今 生活の中心となっている。
インターネット、デジタルカメラ、ペットボトル飲料、スマートフォン・携帯電話・・・・

環境問題は社会問題。考え方(価値基準)、行動を変える必要がある。 今、できないからやらないのではなく、出来るように変えていくことが大切。私たちが原因を作ったのだから、私たち自らの行動で変えていくことが大事。

以下当日の参加者による具体的な取り組みの発表内容です。
・岡山市立操南中学校:総合学習の時間で、地域の6コースでフィールドワークを行い、地域の人から学んだ。中平さんからSDGsの基礎を学び 私に何ができるかをみんなで考えた。
「地域ボランティア」をテーマに 2021年6月にSDGs宣言をして、地域の社会課題の解決に取り組むこととした。 

ポイ捨てや川・海を守ろうとプラごみ回収大作戦を実施2回の回収に90名が参加し、ゴミ90袋を回収した。そこからごみを分別し、縦2m×横4.8mのモザイクアートを制作。
市内外のイベントでゴミの現状を伝え、11月にはグローバルRCEで表彰された。その後もゴミ回収を実施、今年度もう1回実施予定。ごみ以外の環境・社会問題の学習を進め、防災訓練・サミット、気候変動学習、断熱ワークショップも実施している。

・岡山大学附属中学校:①川ごみ海ごみ課題解決プロジェクト:総合学習の授業で、海ごみの回収・啓蒙を行うNPO法人グリーンパートナー岡山 藤原さんから瀬戸内海の海ごみの現状を聞き、1300トンのごみが発生、生物に悪影響を与え、人間の体にも有害物質が蓄積することを知った。 夏休みに河川・用水路で川ごみ調査を行いアルミ・スチール缶、ペットボトル、レジ袋などを水際で回収した。そして現状を伝えるために新聞を作成し、マイクロプラスチックによる生物への悪影響やSDGsの目標とのつながりなどの記事を書いた。

②科学部活動:倉安川でゴミ回収を行い、地域奉仕をすると共に、ゴミの分布や季節による違い確認できた。食品トレイ、アルミ缶、ライターやたばこの吸い殻を夏場は回収。冬場は紙パック・たばこの吸い殻54個、レジ袋30個を回収レジ袋は夏よりも多かった。高梁中学校と合同で対外発表を行った。また、岡山環境教育ミーティングに参加し、デンマークと日本の違いも学んだ。

・釣り人みんなで海を守ろうプロジェクト(全国で700万人の釣り人) 平井マサアキ氏
岡山市の川の3つ特徴: ①倉敷川、笹ヶ瀬川のゴミは児島湖水門でゴミが溜まる。②百間川は水門にゴミが溜まる。③用水路が網目状に張り巡らされ、その傍にゴミステーションがあり、その付近からの用水路への飛散などがある。
倉敷市も河川河口エリアにゴミが漂着蓄積する。ホットスポット8か所。児島湾内は大きな河川の一つとみることができそう。百間川、吉井川河口、九蟠

ゴミを回収しようと呼びかけ、NPO法人グリーンパートナー岡山や有志の力、操南中などを借りてゴミ回収を実施。岡山市は2021年7月から10袋以上のゴミは回収してくれる仕組みができた。国も河川事務所に依頼すれば対応してくれるが、残念ながら岡山県は一部しか対応できておらず、集めたものは、個人が持ち帰ってそれぞれのゴミステーションに出さざるを得ない現状。行政が回収を協力してくれれば2倍の回収ができる。1時間で173袋回収することが出来た。 県の締め切り堤防事務所が回収協力をしてくれた淡水湖周辺のゴミ集めは59袋回収できた。 倉敷川では、151袋の回収ができた。

クリーンアップ岡山 https://www.pirika.org/pref/okayama といさいとがあり、ゴミの情報が見られる。また、アプリ「ピリカ」  ゴミ拾い投稿サイトがあり、同ページからの登録も可能  拾ったごみが地図上にアップされる。自分自身がゴミ収集作戦んへの参加ができるようになっている。

・NPO法人グリーンパートナーおかやま
これまでの歩みを紹介 世界の宝石瀬戸内海を磨く という思いで1998年から市民活動を開始し、2002年に現法人を設立。2001年からは、海ごみ調査や回収を続けてきている。
80%が生活ごみであり、13000トンが瀬戸内海の海底ごみとして堆積している。
2021年度の活動を紹介。昨年は、 7月に与島せクリーン作戦を実施150人で300kgのごみを収集した。同月には、岡山市北区で被覆肥料の意見交換会を開催、川ごみが海ごみとならないように啓蒙やゴミ回収を続けている。9月には川ごみ探偵団として70人で54kgのゴミ回収を行った。
11月には、海ごみフォーラムを開催し、新庄村の中学校、浅口市より島小学校での取り組み事例を発表してもらった。今年度は、7月に愛媛、香川、広島、岡山県合同の小中生サミットを計画している。

・セブンイレブンジャパン
店頭でのペットボトル回収スキームの紹介。ペットボトル回収装置は県内120の店舗に設置し、5本でナナコ1ポイントの付与がある

次にパネルディスカッションに移り、課題ややって良かったこと・大変だったことなどを共有しました。
<やって良かったこと>
・地域の人を知ることが出来たり、つながりができる。
・グリーンパートナーおかやまの思い・活動の話を聞くことで、一人一人の生徒の問題意識を高めることとなり、自分事として捉え、動きにつながった。
・写真を撮ることで、達成感の笑顔を残すことが出来て嬉しい。仲間も増えた。
・海底ゴミ、川ゴミの回収活動を多くの人たちと一緒にできること。
・小中学生は純粋。意識レベルが高いと感じる。

<大変だったこと>
・ごみ収集では夏は臭く、冬は寒い しかし 達成感がある。
・ごみ袋をどうやってクリーンセンターに回収してもらうかの制度づくりを目指すこと。
・資金不足が一番つらい。
・企業としてはペットボトルの回収チェーンの仕組みづくり。ボトルtoボトルはコストが高い。
 しかし西日本で初めて岡山、倉敷両市で実現できた。ここから広島、北九州、神戸京都へ広がり
・岡山、倉敷市のごみは小豆島へ流れつく。しかし、処理は香川県がしないといけない。

<願いが叶うとすれば何を願うか>
・PETボトル 循環のコストを削減し、資源循環がしやすくなると良い。
・ボトル回収率を高めるためにデポジット制度を進められたら良い。
・資金が欲しい
・行政によるごみ回収のスキームづくり。特にゴミ集積のホットスポットでの回収を高める
・ごみ問題の課題を一瞬で多くの人たちに伝えたい。

<これから何をするか>
・良いことを広げる活動  ・横の連携拡大 ・体験学習を広げる ・ごみ回収アプリ「ピリカ」参加者を広げる。クリーンアップ岡山からダウンロードできる。

最後に環境省 中国四国事務所 向田課長より、瀬戸内海4県(岡山、香川、広島、愛媛)と日本財団で取り組む「瀬戸内オーシャンズX」(瀬戸内海へのごみの流入量70%減、 回収量10%増を達成することを目指し、山から海底にまで広がる流域と閉鎖性海域を捉えた海ごみゼロ対策により、循環型社会を見据えた“瀬戸内モデル”として世界に拡げる取り組み) の広がりを期待することと併せて、2021年6月に同法が改正された「瀬戸内海環境保全特別措置法」への言及がありました。
2015年の改正により「きれいで豊かな海」という考え方が盛り込まれ、調査研究が5年にわたり進められてきた。そして、・海洋プラスチックごみ対策   ・藻場・干潟の再生創出の後押し ・気候変動による水温上昇等の視点を考慮した活動を行うことで、水環境保全との調和・両立のバランスを保つ。
即ち、水質汚濁の原因物質である一方、生態系の存立基盤でもある窒素や燐といった栄養塩類の地域に応じた増加等により水産資源の確保を図っていきたい。

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