SDGsを身近に9 岡山でのSDGsのイベント報告⑤
イベント・セミナーその他
こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今回は去る2月25日に開催された おかやま環境フォーラム「持続可能な社会をつくるいい会社の条件とは」
のタイトルで行われた講座を紹介します。良い会社が増えれば、良い社会になっていく。会社の内なる変革が必要であるとSDGsと絡めてのお話しでした。
講師は、株式会社eumo代表取締役 新井 和宏さんです。新井さんは、鎌倉投信という個人向けの投資信託会社を作られ、「良い会社」を探し、育てて来られた方です。
昨年も同じテーマで、岡山市消費者志向経営の講座でお越し頂きました。それに続く第2弾の講演でした。
新井さんは昔ブラックロックという世界一の運用額を誇る会社で仕事をしておられましたが、体調を崩され退職。世界の富の偏在に疑問を持ち、鎌倉投信を設立されました。
目指されるのは、「持続可能な資本主義」です。そして、「誰かの犠牲で成り立つ経済を終わらせよう」良い会社を増やすことで、世界が良くなっていくと行動をされています。
講演の冒頭、「SDGsの17の目標は当たり前のことが書いてある。それが出来ていないから目標となっている。」「ここに、企業経営の本質がある」と厳しく指摘されました。
そして、いい会社に共通している事は「当たり前のレベルの高さ」が元になっている。
それは、「企業が社会問題を自分事にする力が、どれだけ高いのか」ということだと言われました。
一方、悪い会社は「権利の主張=してもらって当たり前」の意識が高い会社であると。
会社は所詮、「人の営み」で行われている。つまりは、「構成する人々の価値観・美意識」で価値が決まる。
人間力が高いかどうかで企業の価値が分かる。コーポレートガバナンス(組織統治)は上記の価値・美意識の社員教育で決まる。
SDGsを自分事として企業が捉え、どれだけ高めていくかがポイントである。
なぜ、児童労働が生まれるのか? 経済の合理性だけを求める経営を実践していると児童労働のようなことが生まれ、SDGsのゴールには辿り着かない。
人が幸せになるには、「人間関係が良好かどうか」が大きく関わる。企業に勤める人は多くの時間を会社で過ごす。だからこそ、会社が全うでないと幸せにならないし、老後病気になる。
選ばれる会社になるためには、「自分のレベルを上げていく」「自分の会社のあるべき姿を磨く」ことが必要。
即ち、「社会課題を自分事にする力」自分たちに関係がないと思うのは、視野の狭さでしかない。
利益も重要、会社の社会性も重要。このバランスが取れていないと企業は永続しない。
企業の利益=カネ は目的ではない、あくまで手段。 幸せは多種多様、カネは客観的で説き伏せるちからがあるから、ついつい重視されがちだが、企業理念より利益がなぜ重要となるか。本末転倒。
自分の経験からすると、外資系企業に勤務していた頃は沢山の金を持っていたが幸せではなかった。株主の為に利益を上げるという考え方はおかしい。
これからの10年間は、AI,IOTが様々な事を可視化していくことになる。P/L(損益計算書)、B/S(貸借対照表)は株主のためにあるという今の価値観が変化していく。
リターン=資産の形成(カネ) × 社会の形成(幸せ) × 心の形成
自分はこれまで、「カネを預かって」「幸せをリターンする」投資会社を作ってきた。10年前はバカといわれたが、今はその方向だと言われてきている。10年で企業の価値が変わった。
良い会社かどうかは 資産形成、社会の形成、心の形成の3要素が揃っているかをチェックすると良い。
見える資産形成(税金、預金、不動産)と見えざる資産(社風・企業文化、社員力、社員のモチベーション)をチェックすべき。会社の雰囲気はごまかしが効かない。これもテクノロジーで計測できるようになってきた。
近江商人の価値観は三方良しだった。今は、利害関係者(ステークホルダー)が増えたので八方よしの経営が求められる。八方とは沢山という意味 1.社員 2.国 3.社会 4.地域 5.顧客 6.株主 7.取引先 8.債権者 9.経営者。 八方より経営は、コスト重視からファン経営、関係性重視の経営に変わってくる。
良い会社の経営者が口をそろえて言うことは、「経営者は役割」 上か下かは関係がない。理念が中心。
今後、社会性のない事業は成り立たない。もう、若い人はカネでは釣れない。価値観が変わってきている。
< 今、社会が変わろうとしている >
事例1 最新の図書館はトイレの扉がひとつ。男女分けるのでなく兼用。性差別をしない方向で全個室。夫婦で一緒に子供のおしめが変えられるようになっている。
事例2 ビーガン(ベジタリアン)の登場は学校の授業で、牛のゲップによるメタンガスが環境に影響が大きいことを知った子供たちが、積極的に肉を食べない行動を取るようになってきた。ライフスタイルが変わった。
事例3 日本環境設計という企業が教科書に載っている。ゴミをエタノールに変える技術を持っている。ゴミは資源という意識が広がっている。時代は変わっている。やる気スイッチも違ってきている。
モノ・サービス飽和の現状 ここから抜け出すには2つの方法しかない。
1. イノベーションを起こす 他にないものを提供することで価格競争から開放される。
2. ファンを増やす 趣味的領域は、経済合理性から抜け出す行動をファンに取らせる
行政も変化してきている。 金がないので企業に肩代わりして欲しい。⇒共感感動を与えることができる組織づくりが大切。社会課題を自分ごととして捉えられる社員を作ることが重要。感動が沸点に達すれば自然と人は伝えたくなる。
・長野県伊那市 菓匠shimizu 地元の殺傷事件を機に「夢ケーキ」を作り始める。家庭に自社のケーキがあれば悲しい殺人事件は起きなかったはず。
・広島県福山市 エフピコ 食品トレーの製造、回収・分別・リサイクル 社員の75%が障害者。損益計算書が読める社員に育成。
自分ごとにする力は、本業の拡大解釈がどこまで出来るかということ。自分の会社だけ儲かれば良いのですか? 企業の度量が決まる。 本業じゃないから儲からなかったらやめてしまう。本業への理解不足。
本業の延長線上には必ず、社会がある、環境がある。本業の定義を今一度見直す時代。
金で解決できないことを解決しないといけない時代。
サイボウズ(IT企業):100人100様の働き方を認める。在宅勤務、介護など どういう兎チームを作るか会わなくても結果を出す働き方。バーチャルオフィスを作り事業運営。オフィスの大きさにも変化が起きている。
これからは、社会課題を自分事にすることの出来る会社が、感動を生みながら事業を実行することで、SDGsの目標達成に繋がっていくと感じた講演でした。より確実に実効する為には、バックキャスティング(あるべき未来の姿を描き、11年間でどういうステップで実行するかの計画を立て実行する)手法が重要です。
