
こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今回は、3月23日に開催された「消費者志向経営セミナー」(岡山市主催、運営NPO法人岡山NPOセンター)3回シリーズの最終第3回目の講演会内容をご紹介します。前々回の講師、鎌倉投信が投資されている企業の一つ、 ピジョン株式会社です。
「ピジョン」と聞けば皆さんは何をイメージされますか?子育ての経験のある世代には「哺乳瓶」という言葉がすぐに浮かぶのではないでしょうか?
そうなのです。哺乳瓶では世界的なメーカーなのです。因みに、同社の事業規模は、売り上げ1025億円(国内は338億、中国345億)国内の販売の内20%が中国の旅行客によるインバウンドということです。主力の哺乳瓶は30%の売り上げ比率ということです。
今回の講師は、 ピジョン株式会社 経営企画本部 コーポレートコミュニケーション室 チーフマネジャー 山口 善三様です。 冒頭、山口様はご自身と会社の出会いについて語られるところから始まりました。転職で就職されて、20年 出会いは、「変な会社」という同社の求人募集に有りました。経営理念である「愛」について朗々と書かれていたそうです。そこで、応募し縁が始まりました。
< 理念経営実践による事業の実施 >
同社は、2代目社長の時に経営理念「愛」、社是「愛を生むのは愛のみ」を制定されました。1980年のことです。世界の赤ちゃんが使用し、世界の母親に愛されるピジョンの商品の数々ですが、社員が同じ志を持つ人として一緒に仕事をする為には、経営理念の制定が不可欠でした。特に海外での事業展開をしていくうえで、言葉や人種が違う社員に伝えるには、共通の価値を共有する必要があったと言われています。
日本人同士では以心伝心(ハイコンテクストカルチャー)ができるが、海外の人は空気を読めない、1を伝えるためには10を教えないといけないローコンテクストカルチャー。
仕事で起きる問題の本質は、コミュニケーションにあり、言葉の定義をすることでコミュニケーショントラブルが減少する。この考えの元、「ピジョンウエイ」という独自の価値基準、行動基準作りを行われました。海外の事業所では週1回のピジョンウェイミーティングを実施している所もあります。
< ピジョンウエイと企業価値 >
「ピジョンウエイ」では、「経営理念」、「社是」、「使命」と共に、業務遂行上、社員一人ひとりが大切にする3つの「基本となる価値観」、私たちの行動のベースであり、ガイドとすべき5つの「行動原則」、そして、中長期的に達成したい姿である「ビジョン」を設定されました。
20年前までは、同社も売り上げ追求型の企業であったそうです。しかし、ピジョンンウェイでは、数字の目標は最優先ではありません。
ただし、理念を如何に成果が見える形にするかについては、個人レベルで目標を決めて取組み、半年単位で実施、検証をします。ミッションの達成度合い、社員の働き甲斐・生きがい、最後に売り上げ・利益について問われるとの事です。目標は5%の改善を目指し、優秀な社員は全社の大会で紹介されます。ピジョンウェイは手帳として全社員に配布され、毎年度の個人目標も記載し、随時必携となっています。
ピジョンが考える企業価値は社会価値と経済価値の両立です。社会価値は、企業にとっての牽引力つまり前輪で、社会になくてはならない存在としての方向を決めるもの。一方経済価値は、会計であり、車の後輪の役目、走り続けさせるための原動力です。
それだけに、社員がノーリスクで発言できる風土、仕組みを作ろうとしています。相手を認める、例えマイナスでも前進すればそのことを認めることで、成長を促すそうです。
< ピジョンの商品づくり >
同社の商品は、18カ月未満の乳児に限っています。主力商品である、哺乳瓶は、新商品を発売するのに8年物年月を費やすそうです。
赤ちゃんの口の形状や乳の吸い方などを研究し、母親の乳首に近い吸い口を作っています。1500gの未熟児でも飲める哺乳瓶はピジョンだけです。口唇蓋裂用の乳首開発も行っています。世界に哺乳瓶の中でもひときわ信頼の高いものとして、コアコンピタンス(他社に負けない強み)と位置付けています。2歳未満の子供の口の中の形状や下の動きなど民族間で差がない事が分かったのは、同社の弛まない研究の成果であると考えます。
< ピジョンの様々な取組み >
ピジョンの男性社員は全員が育児休暇を連日30日間取ります。取り組みを決めてから3年で100%となったそうです。社員が育休をとれない職場の上司は社長に直接説明を求められるようにしたところ効果はてき面でした。
・赤ちゃん誕生キャンペーンという事業があります。商品の愛用者から全国で15000人の応募があり、抽選で植林を行い、これまで30年間で13万本を茨城県の国有地に植えています。間伐材等を使ってモザイクアートプロジェクトという社員が森と親しむイベントを企画し、オリジナルのアート作品を作り、その後は積み木として保育園に寄付する活動も行っています。
世界で商品を販売するだけに、国外での社会貢献活動も行われています。中国の山奥、へき地に1年1校の割合で小学校を寄贈、9校の実績があります。様々な施設での授乳室設置支援は15か国5000か所に及んでいます。
国内では、出生数が減り、産科小児科を希望する医師が減っています。そこで産科小児科の医師を希望する学生には返済不要の奨学金を給付しています。将来を見据えた社会貢献活動ともとらえることが出来ます。
最後にいい会社の条件とは?の質問には、社会の課題をビジネスで解決する会社ではないかと講師の山口様はお答えになりました。 本業で社会貢献をするCSR3.0をこれからも実践される企業ではないでしょうか。