持続可能な社会を考える 「もったいないを美味しく&儲かるへ」
地域課題・社会課題その他
こんにちは、ゆうあいセンターSDGs&CSR相談員 小桐です。
新型コロナウイルスの定義が変更されてから1年が経ちました。社会も全体的にコロナ禍からの回復を見せ始めているのではないでしょうか。と言いつつ物価高で庶民の生活は一段と苦しいものとなっています。
今回は、2024年4月13日に開催された「山陽新聞 SDGs×吉備の環プロジェクト 地域課題に挑む第2回シンポジウム」、ならびにその事前ワークショップとして開催された「SDGsネットワークおかやま主催事前ワークショップ」の模様を抜粋してご紹介します。シンポジウムのテーマは、「もったいないからおいしいへ」でしたがここでは、あえて「美味しく&儲かるへ」とさせていただきました。
過去に、山陽新聞のシンポジウムでは食品ロスの有効活用についてとりあげましたが、廃棄食品を減らすことで、可食なものは食べきってしまおう。販売できなくても食べられるものは食べよう。貧困状態にある方々に提供賞味期限前の食品を提供する、自家消費では賞味期限を気にせず食べよう。消費期限が切れても1日位は大丈夫。食べることで、廃棄物として燃やせば温室効果ガスが増えて地球環境に悪い影響をあたえるのでそれを減らそう。或いは、食品残渣から発酵によりメタンガスを取り出し燃焼させて発電しエネルギーを取り出すという 食品が商品となり、販売された後の状況をどう利用するかが議論の中心でした。
今回のシンポジウムでは、商品になる前の食材(野菜・果物)の有効活用を含めた商品の生産、販売そして調理方法にまで視点を広げて、食材の命をありがたく、美味しくいただく取り組みを共有しました。
そして、食品の生産者にとっては信者(購入者)が増えるようなあらたな視点の商品を紹介し、見えざる食品ロスの削減についても情報を共有しました。
規格外の果物や野菜は販売できないために味は同じでも廃棄されてしまうことがこれまでは多くあります。
同じ肥料や手間、そしてコストがかかっているのですが、見た目が悪い、不揃い、小さいなどの理由で販売されずに廃棄されるものが結構あるそうです。
金光学園3年生の山本伊織さんは、祖父母が栽培する桃の規格外の有効活用を考え、地元の酒造メーカーの酒粕とミックスさせてアイスを作り校内で販売しました。実はこの酒粕も全国で年間1800tも捨てられているそうです。酒粕にはメラニン色素の生成を抑制する成分が入っているとのことで、肌にも良いとのこと。高校生のアイデアによって二つの捨てられるものがおいしいものに変心をました。
この新商品開発は、高校の探求学習で生まれたものです。今後は牛の飼料として使えないか研究を進めるそうです。お酒は肉を柔らかくするので良いお肉につながることも期待されます。
岡山龍谷高校でも、規格外で廃棄予定だった地元の野菜を使い、3種類の冷凍スープを作りました。スープカレーにはなすびを、ミネストロネスープにはトマトを、クラムチャウダーには芋を使いました。
地元に近い福山市の企業とコラボをしてKASAOKA KITCHENと名前で商品を開発中。その前に地元のトマト生産農家にヒヤリングをし、デザイナーとパッケージなどの打合せを行うそうです。5月に商品を完成させ10月に販売予定とのことです。高校生と企業が廃棄予定野菜を使ってあらたな商品を作るという社会課題解決と共に消費販売に結び付く新たな取り組みです。
一方、形の悪い野菜を使って時短と個食にもフィットするカット野菜を製造販売しているのが、真庭市にある真庭あぐりガーデンを運営する十字屋グループです。同社は第1回おかやまSDGsアワードで特に優良な取り組みとして表彰もされています。カット野菜の紹介は広報担当の木島です。「おせっかいやさい」として地元の農家で作られたけど規格外で販売できないものをカットして袋詰め。これは、地元のおばあちゃんたちの発案で始まり、今では100人の方々が5か所で加工をしているとのこと。年間20tもの捨てられていた野菜が今では、レストラン、スーパーマーケット、県外アンテナショップやWEBで販売されているとのことです。
カット野菜は、包丁要らず、まな板要らず、忙しい子育て世代の時間づくりにも貢献できるとのことです。
学生と企業のコラボの事例をもう一つ紹介します。山陽学園大学の金塚 優輝さんは、倉敷市の美観地区三宅商店や酒津で水辺のカフェを経営する有限会社くまの辻信行氏とコラボをして、Z世代発案のお菓子やジャムなどを開発しました。地元の農家の産物をすべて買い取り、種をも商品化する取り組みです。瀬戸内ドライフルーツを使ったフロランタン、ジャムグミ、連島ごぼうのクッキー、桃パウンドケーキなどいろいろ。この経験を生かして金塚さんは、Z世代のアイデアと食材を製造する企業(農協や農園、卸売市場など)とコラボさせ、商品開発を行うWEBシステムのビジネスを立ち上げました。企業は定額でZ世代のアイデアを活用し商品開発につなげていきます。若い世代に支持されるこれまでにない新しい商品が誕生しています。地域マネジメントを学習する中で生まれたビジネスです。Z世代がインフルエンサーとしてSNSでも投稿するので、新たなマーケティングが実践されています。美味しい&儲け(信者と書いて儲)につながっています。
販売を通して社会貢献とビジネスを成立させているのが、食品ロス削減ショップecoeat(エコイート)です。
廃棄予定の飲料や食品を買取または無償で引き取り、その中から賞味期限残にかかわらず安全かつ美味しく食べていただける食品のみを陳列しています。購入者を限定せず、誰でも、商品を買えます。と説明されたのは岡山北店の川崎 翼店長。NPO法人日本もったいない食品センターは、賞味期限2か月前の商品を購入し販売。また、生活困窮世帯3802軒や51慈善団体には無償で1100tの食品を提供しています。大阪本部で購入する他、地元岡山の企業とも今後取引する予定。ホームページを見ると倉敷にも店舗があり、全国21店舗で運営しています。賞味期限切れても3~4か月は食べられるので、実食してから販売。消費期限切れの商品は販売しないとのことです。メーカーは賞味期限の80%になった時点で見切るので商売になるとのことです。
続いても販売側からの話ですが、ハローズモデルを確立し、廃棄予定の食品を無料で提供されているハローズ商品管理室長の太田様が、まだ、生活困窮世帯への支援が国内では不足しており、コミュニティパントリー(公共食糧倉庫)の普及が必要とイギリスでの現状を視察された報告がありました。イギリスでは大小殆どの小売店が食品提供に協力、受け取る側のコミュニティパントリーは260か所あり、1か所あたり年間1億円の食品の提供を受けている。その背景には、食品をもらった人は自己責任で食べる良きサマリア人法という、渡した側には責任はないという法律があるからということです。日本も昨年度国会で検討されかかったが、審議されなかったので、今年もう一度検討する方向とのことです。国民の暮らしが苦しくなる中、新たな法律制定で、困窮世帯が救われるようになればと考えます。当日はハローズ様から持ち帰りできる食品が提供されました。
このほか、企業や行政・団体が災害備蓄品として常備する食品の中にアルファ米があります。水やお湯を入れるだけで炊き込みご飯などができますが、レシピ通りではあまり美味しくないと美味しく調理する方法の説明や、野菜を健康的に食べるために野菜の皮や果物の皮も捨てずに工夫して調理することでフードロスを削減することができると野菜ソムリエの方からも説明がありました。
いただきますは、命をいただくことへの感謝の言葉 命は丸ごといただくことが大事ということが分かったシンポジウムです。