企業価値を高める商品について

地域課題・社会課題環境

Noboru Ogiri

こんにちは、ゆうあいセンター CSR担当 小桐です。
前回は、企業のCSR活動がブランド価値を高める「ソーシャルブランディング」の確立についてご紹介しました。環境・社会・組織統治の3つの分野での活動が必要というお話しでした。
今回は、企業価値を高め、環境・社会の課題解決に役立つ商品の例をご紹介します。

私たちが普段何気なく着たり、使ったりしている綿の衣料品・日用品ですが、実は、この綿に関して多くの人が知らない環境と社会の課題があります。この課題を解決するオーガニックコットン商品のお話しです。

綿の衣料品ですぐ浮かぶのが下着、ジーンズなどのアウター、Tシャツ、パジャマ等ですね。タオルやハンカチ、寝具、カーテンなどにも幅広く利用されています。
綿が世界で広く愛され、利用されるわけは3つ。世界のあちこちで栽培が可能なことと、簡単に糸にすることができること、かつ汗などの水分を多く吸ってくれることです。

かつて、日本でも、江戸時代中期から明治の半ばくらいまでは盛んに栽培されていました。
今は、中国、インド、アメリカ、パキスタン、ブラジルなどで栽培されています。
ご存知の通り、綿は植物です。この栽培には、多くの農薬や化学肥料が使われています。
世界の農作物の栽培面積うち2.5%の綿畑では、世界中の10%の農薬と16%の殺虫剤が使われているのです。

土にしみ込んだ農薬は井戸水となり、栽培農家の生活水として利用され、また十分な知識のない人たちが素手で農薬に触るなど多くの健康被害を生んでいます。栽培管理や収穫には多くの子ども達が従事しています。これは農繁期だけでなく、1年を通して行われるので、児童労働と呼ばれています。

特にインドでは、栽培されている綿は遺伝子組み換えのものが多く、栽培農家は毎年種を購入しなければならず、そのF1種の栽培に女児が多く従事しています。学校に行けずに親の借金返済のために児童労働を強いられおり、12時間近く働いて200円未満の日当と言われています。

「オーガニックコットン」という言葉を聞かれたことはありますか? 3年以上農薬を使わない畑で、遺伝子組み換えでない種類の綿を栽培したものです。手間がかかるので通常の1.5倍ほどの価格ですが、畑の土が荒れず、水が汚れず、栽培農家の収穫が増え、その分児童労働もなくなるので、「地球と人にやさしい」綿と言えます。残念が乍ら世界の0.8~2%未満の普及率です。 

昨年世界の合意となったSDGSでは、「極度の貧困の撲滅」、「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活の確保」「普遍的初等教育の達成 」を挙げており、オーガニックコットンはまさに、ソーシャルブランディングの環境と社会の課題を解決する綿です。
 
かつては地球上のすべての綿がオーガニックコットンでしたが、安さと沢山の衣料品を所有したいという消費者行動が今の環境問題と社会問題を生み出しました。私の綿栽培の経験では、綿の消費を今の25%減らせば世界の綿は、全てオーガニックコットンで賄うことが可能だと思います。

著名なアウトドアメーカーのパタゴニアでは、綿素材は全てオーガニックコットンを使用したものです。環境負荷を減らすのが目的で、売り上げの1%を環境改善するNPO等の団体に寄付しています。同社の社会的な価値が高いのは、多くの方がご存知の通りです。
日本でもリージャパンはオーガニックコットンのジーンズを販売。最近では、無印良品がオーガニックコットン商品を多く販売するようになりました。20年以上も前から、オーガニックコットン製品のみを扱うアバンティというベビー、女性服のアパレルもあります。

企業のスタンスとしては、環境・社会課題を解決するオーガニックコットンを増やすことが良いように思われますが、目先の売り上げを考えると中々オーガニックコットン商品拡大するのは、難しいようです。

企業ごとに取り扱う商品・サービスはまちまちですが、自社商品・サービスに関する様々な情報を公開し、商品の背景を明らかにすることでソーシャルブランディングの確立をすることができるのではないでしょうか?
目先の売り上げに固執して大きな社会問題を生み出した三菱自動車の企業姿勢を省みると今後の企業の在り方が見えてくるのではないでしょうか?

また、逆に生活者として私たちは安さだけを求めていいのでしょうか?私たちが消費者から生活者へと意識を変えると、オーガニックコットン商品のような価値のある商品が増えていくのではないでしょうか? 購入は選挙の投票と同じと言われます。どちらも社会を変える原動力です。

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