持続可能な社会を考える 「次世代と描くまちづくり」

地域課題・社会課題まち・むら

今日は、こんにちは、ゆうあいセンターSDGs&CSR相談員 小桐です。

今回は、山陽新聞連続シンポジウム 「次世代と描くまちづくり」について事前ワークショップと当日のシンポジウムをミックスした形で、情報提供をさせていただきます。

丁度、事前ワークショップ開催日の9月13日とシンポジウム23日の間にニューヨークで開かれた国連総会。その直前に発表されたSDGsの進捗に関するレポート「GSDR2023」。この内容を踏まえ、グテーレス事務総長からは、厳しい発言がありました。
「誰も置き去りにしないどころか、SDGsが置き去りになってしまう。SDGsを救うプランが必要です」

今年はSDGs最終年2030年までの折り返しの年にあたります。9月10日発表の報告書によると、データの評価が可能な約140の指標のうち、約48%が「大きく軌道を外れている」で、約37%が「停滞または後退」とした。順調に進んでいるのは約15%しかないとしています。
そして、目標達成のためにレポートGSDR2023では、次のようキーワードが書かれています。 『危機の時代、変化の時代、加速のための科学、変身、持続可能へ、発達』これを認識し、行動を起こさないと残念な結果に終わってしまいます。目標達成のために以下の6段階で考え、知り、行動することが必要。

このレポートの序文では、 「私たちは今どこにいるのか」、「私たちはどこへ向かっているのか」、  「何をなすべきか」、 「どうすればできるのか?」 「科学の統一的な役割」、「今後のステップについての考察を促す行動への呼びかけ」ですと書かれています。何かを考える際にはこの問いは、とても重要だと思います。

話を戻します。「SDGs地域課題をさぐるという」基本の趣旨の基に、シンポジウムは開催されてきました。今後、東京の一極集中では、日本は立ちいかなくなる。地方の生き残りがカギとなる。という前提のもと岡山県が持続可能な社会となるためには、みんなが生き生きと暮らせる社会になるにはどうしていけばよいかを様々なテーマを通して考えてきました。
今回のテーマは「次世代と描くまちづくり」です。このテーマの背景には、今年4月に子供基本法が制定され、子ども家庭庁が発足し、国としても子供の意見を聞くことが始まっています。大人の都合だけでやっていては、成果が出ないことが結構あります。地域の人口減少が顕著になる中、地域の持続可能性を考え、まちづくり×ひとづくりを一緒に行う活動事例が増えてきているとのことです。 
  これからの時代を担うのは若者たちです。事例を通して情報を共有し、持続可能な岡山を一緒につくっていきましょう。

◇中高生がまちづくりを考え、まちを元気にする取り組み
岡山市北区奉還町にある一般社団法人SGSGでは、理事長の野村さんを中心に、若者たちを既存の社会に無理やり適応させようとする従来の教育から抜け出して、小学生から高校生に対し多様な学びの機会と場を提供し、若者みんなが自分たちで考え、幸せになれる社会を新たに作れるように、そして将来地域社会の担い手となる若者を育成する活動を続けて来られました。
学校以外にも居場所が作られ、そこからは若者たちによる新たな活動が始まっています。
活動を紹介してくれたのは、『自分のやりたいことと社会のニーズをつなげる活動』#おかやまJKnoteに参加する御南中3年生の水粉こころさん。自分の住んでいる町ではないけど、関わりのある奉還町は楽しい。主に高校生が中心となって、居場所だけでなく、自分たちに関係があると考える社会課題の解決にむけて様々な企画を自分たちで考え、実行しています。
自己満足とならないように、グループ以外で地域の課題解決にチャレンジしている 矢掛町YKG63や埼玉県筑波大学附属坂戸高校生と2泊3日の合宿を行うなど自分たちの住む地域づくりに関しての情報・意見交換を行ってきました。 
同組織では、中学3年生を対象にした高校進学フェアを実施し、県内の各高校生のボランティアによる学校紹介などを行っています。このほか、通信制サポート校「奉還町学習センター」の運営や普段中高生の居場所 奉還町ユースセンターが日ごろお世話になっている地元奉還町商店街への恩返しとしての企画なども実施しています。 https://www.sgsg.work/
若者の活動なので失敗も多く、大人が謝りに行くこともあるけど、放任でなく見守ることが重要と話されました。

◇西大寺活性化協議会内 五福通り景観プロジェクト
岡山西大寺に立地する岡山学芸館高校の地域活性化ゼミの女子生徒4名( シンポジウム登壇)が
2年わたる活動と課題を紹介してくれました。西大寺観音院の傍の五福通り商店街が空き店舗な、空き家が増える中、空き家の活用や清掃活動などの活性化策の提案を行ってきました。提案が、自己満足とならないように地域の方や通りの訪問者にアンケートを実施し、その中から、活性化の策の一つとして、夜の人通りを増やそうという「行灯プロジェクト」を現在進めています。
地域の声を反映したレトロなデザインの行灯制作や地域の小学校での行灯制作のワークショップを実施しています。12月までに完成させ、2月の西大寺会陽に間に合うようにするそうです。
実施に向けては、地域との意見交換・すり合わせがまだまだ必要ということで、高校生の学びがどのように発展するか今後見守りが必要です。

◇玉野市 うのまる + TMANANO BEADS 協働して地域の活性化に取り組む
上記の西大寺活性化協議会の事務局を勤めながら、自ら玉野市の宇野港周辺の活性化を行うハルさん(合同会社LILLARD代表 上田 春彰氏 シンポジウム登壇)。自身は、県外の出身で高校3年間を学芸館高校で過ごし、6年前に縁あって岡山に戻り、現在玉野市の活性化に注力されています。
シェアショップUZ(うず)を営み、午前10時までは喫茶キンバリーを営業、その後の時間はこの店を使いたい人に貸して、好きな活動を行ってもらっています。ご自身は、玉野青年会議所やNPO法人港町づくり機構たまの、築港商店会等でも活動中です。まちとまちをつなぐまちづくりがテーマです。
そんな中、玉野Beads(国際交流や玉野に興味のある高校大学生の集まり)が外国人対象に玉野のガイドやインタビューする活動を起点にしながら、自発的な活動で街を盛り上げたいとUZを借りてカフェで外国人と交流しています、うのまるイベントの手伝いや学生の視点で見つけた玉野の魅力スポットをオリジナルまちあるきのカード形式のマップ形式で作りました。
10月21日には、ハルさんがを中高生と一緒に企画する玉野の魅力を発信・盛り上げる、1万人規模のイベント「うのまる」と後に出てくる「旅するひとづくりまちづくりフォーラム」が宇野駅周辺で開催されます。

◇町に育ち町に戻り、町を考え、人を育てる くらし・き・になるまちづくり
ノートルダム清心女子大学の準教授 成清 仁士さんは倉敷市の中心部の出身。大学時代故郷を離れ、その後地元に戻り就職、家の近くの空き家が壊され街並みが変わっていくことに疑問を感じ、NPO人町家トラスト中村代表や福武教育文化振興財団の助成金とのめぐり逢いで、活動を続けてきました。

空き家、空き店舗などを自身のゼミ生と歩き、地域の人々と一緒に掃除をしたり、一緒に街を歩いたり、イベントをすることで世代間交流や対話の機会が生まれました。
居場所ができたと感じる学生やまちづくりの仕事に就いた学生もいます。くらしきづくりマップが2023年2月に完成しました。これは若い世代、高校生に手に取ってもらいまちについて考えてもらうきっかけの一つです。学生中心で作りました。
さらに、 2067年のくらしきの未来を考えることを始めています。倉敷、児島、玉島3市の合併から100年後のまちづくり。官民連携で、倉敷市、NPO法人町家トラスト、企業、他団体等で構成する「くらしきになるミーティング」を立ち上げ、ユースセッションも設けています。
未来を考えるイベントに30人の高校生・大学生が集まってくれた。まちが次世代を作り、次世代がまちをつくっていく、それを応援する組織が必要と感じるとの成清さんの言葉です。それがあれば若者はどんどん活動を続けられる。
現在地域おこし協力隊にいる女性は、空き家改修で漆喰塗、床板梁などをワークショップとして行い、若者がまちづくりにかかわる活動を進めています。いずれ買い取って商売をすることを考えています。

ここで、モデレーターの石原氏より まち(づくり)が若者(学生)を消費する  若者(学生)がまち(づくり)を消費する この2つのことが起きないようにするにはどのようなことが大事かの質問が出ました。

成清さんからは、若者が自分の目で見つけると自ら提案ができる。それが防止につながるのではないか
ハルさんからは、企業のインターンシップと同じで迎える側の思いをしっかり伝えることが重要。
学生の立場として、高校生からは、以下の発言がありました。 夜のイベント景観ばかりを意識していて、昼間の景観が損なわれたりしている、まちへの愛着がわきにくい状況があると地域の方から指摘も受け、自分たちがやっていることを見直すきっかけにもなった。
 石原氏からは、地域(まち)と若者の対話が重要であるとまとめがありました。

◇「ふるさと井原の未来を創るひとづくり事業」
続いて、自治体の取り組みとして、地域を支える人づくりで実績を残している井原市の事例紹介がありました。 
井原市では、令和元年から「ふるさと井原の未来を創るひとづくり事業」をスタートし、『ふるさと井原を愛し、ふるさと井原のために実行する』ことのできる人材の育成に取り組んでいます。
この事業で目指す「ひと」を【井原“志”民】と呼び、井原“志”民として身に付けたい力を市民の意見をもとに市民の手で【井原“志”民】として集約・整理し、学校・家庭・地域が力を合わせ、地域ぐるみで育む取り組みが始まっています。 と市のHPにはあります。

将来のまちのことを考え、アンケートも行い、将来帰ってきたくなるようなまちを人から作っていく取り組みです。数値で表せない能力を非認知能力といいます。そこを伸ばすすとともに、井原“志”民力と定義して 郷土愛と当事者性、忍耐力と向上心、発信と協働で巻き込む力をはぐくむ教育を町全体で行っていこうとする先進的な取り組みです。
井原“志”民力を育むために、ふるさと井原の「もの」「ひと」「しごと」に出逢いと関わりを大切にした【ワーク&ライフキャリア教育】に取り組んでいます。地域で活躍する大人たちと交流することで、職業観(ワーク)と人生観(ライフ)を学びつつ、地域とつながりながら将来の自分の生き方(キャリア)を考える機会を増やしています。
そんな中から、地域の朝市に手伝いで参加し、さらに企画を自分たちで考えて、実行する中学生が育っています。また、前述のSGSGとの連携や 地域を学び特産デニムなどのアピールを考え、地元商工会と連携してデニムファッションショーを企画したり、井原市のオリジナルSDGsマークの制作にっかわったりしています。しごとを学ぶ機会として、修学旅行も活用し中学生が関西の企業のSDGsの取り組みを学んだりしています。
日ごろから、井原地域のことを考える習慣が身についた中高生たちは、井原市まちづくりフェスタというイベントに40人が参加。市民160人に対して10ブースの事例発表を行うなど地域の学習を地域の人達に伝える交流ができています。 行政、学校、企業、市民が連携して若い世代を育てている好事例だと思います。早島町でも園児世代から中学生まで(地元に高校がないので)地域のことを学ぶ教育を実施しています。自治体が本気になり待ちの未来を考えるときに若者の存在がそり重要になってきています。

◇ヒトづくりまちづくりを官の事業から民間の事業へ移行
「ヒトづくりまちづくりフォーラム」として2年間、県の事業として開催されたイベントが今年より、福武教育文化振興財団の助成を受け、ヒトづくりまちづくり実行委員会が中心となって開催するフォーラムとなりました。
同フォーラ表では、上記のように各自治体や地域で行われている様々な取り組みを掘り起こし、県内各地で開催し、事例の紹介・共有とともに、それぞれの地元で活動が行えるように人のつながりを作り、輪を広げることを考えて実行しているとの説明がありました。
事前ワークショップや当日のシンポジウム参加者の中には、結構多くの人が、同フォーラムで事例を紹介されているそうです。
今年から民間に事業主体が変わり、「旅するひとづくりまちづくりフォーラム」としてスタートしています。
7月和気町で、10月は玉野市で、その次は矢掛町と 学校を超え、季節ごとに開催場所を変えて実施します。そして、開催した地域が自立・自走していくことを目標に3年つづけるという話がありました。

事前ワークショップスピーカー達からは、異口同音で印象的な言葉がありました。
放置でなく任せることが重要。 大人だけで効率性やスピード感をもって考えるより、将来まちづくりの担い手となる中高生の意見を聞くことは重要。生徒だけでは、限界があり地域の人とのつながりが重要となるとなる。

◇岡山市ESDカフェでもひとづくりを考える
この人づくりに関して、9月21日に岡山市主催で3年ぶりに復活した ESDカフェが開催されました。
ゲストスピーカーは、上記のモデレーターも務めた 岡山NPOセンター 石原 達也氏。
テーマは、「探求の先を勝手に考える ~生徒や市民の探求や調査をどう社会に活かすか~」

まさに本番の連続シンポジウム と連動したテーマでした。 この日は、26名が参加しました。会場のイコットニコット2階のワンダーウォールに16名、WEB参加が10名。「探求の授業」は中学・高校などの総合学習の時間を使って行われたりしており、教育関係や人づくりに関心のある方々が多く参加されました。

石原代表からは、岡山NPOセンターの事業を紹介しながら、それが、人づくり、街づくりとどのようにかかわっているかの紹介があり、その後個人ワークとグループ内の共有を行いました。
色々なところで、今後の岡山をどうするか、多くの方々に情報が伝わるようにすることもまた、重要であると感じました。
ESDカフェは毎月イコットニコットで開催されます。次回は、10月19日ゲストは、環境カウンセラー協会事務局長、元アスエコ所長の中平徹也さんです。ESDの視点を取り入れた環境学習の推進というテーマです。少し硬く感じますが中平さんの軽快なトークはきっとわかりやすいものです。

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