持続可能な社会を考える「岡山県地球温暖化対策実行計画」

地域課題・社会課題環境

今日は、こんにちは、ゆうあいセンターSDGs&CSR相談員 小桐です。

今回は、今年3月に改訂された「岡山県温暖化防止実行計画」の概要と共にその策定に関しての市民の動きや県の対応についてご紹介します。
今回のG7広島サミットでも確認された温暖化防止対策の各国の取組ですが、皆さんは、私たちが2030年までに果たさなければならない 温暖化に対する目標や行動についてご存知ですか? 殆どの方が知らないか知っていても意識が薄いという状況ではないでしょうか?

レジ袋をもらわないようにしたから大丈夫、家庭ごみはキチンとリサイクルに回しているから責任を果たしている。ハイブリッドカーやEVに最近変更したからCO2排出は減っている。食べ物も国産や有機のものにしているし、生ゴミはコンポストで土に戻しているから、節電にも心がけているし、結構CO2削減には
貢献している。・・・確かにこれはこれで重要ですが、まだまだ 削減量は足らないのです。

環境に関する条約締結国会議COPは毎年開催されています。
2021年のCOP26では、に地球の平均気温の上昇を1.5℃までに(既に1.09℃上昇済)抑える必要があると合意し、日本は2013年比46%の削減を約束しました。
これは、産業(製造、エネルギー―転換、物流、事務作業、廃棄物等すべての合計)に家庭生活を加えたものです。なんと驚くことに、家庭部門では、66%のGHGの削減をしないといけないのです。
家庭の中で何が一番GHGを排出しているかご存知でしょうか? なんと電気なのです。電気製品使用によって発生するGHGは家庭の36.5%程です。次が自家用車による排出23%弱、それから
ガスや電気などを使った冷暖房が14%強、給湯が13%弱、驚くことに家庭ごみからは6.5%、水道からも2.3%のGHGを輩出しているのです。

電気及び電気製品を使わなければ成り立たない私たちの暮らしで66%のGHGを減らすには、どうしたら良いか? まずは、効果を考えると排出率の高いものから削減すべきと考えるのは当然です。
かといって36.5%の中から何を削りますか?24時間稼働する電気冷蔵庫。1日のうち8時間弱だけ使って66%削減なんてことはまず考えられないことですよね。
今の生活を維持しながら、GHGを減らすにはどうする。節約だけではどうにもなりません。GHGがゼロの再エネに変えれば大きく減るという理屈は分かっていただけると思います。
対策の一番は使用電気を大手の電力会社から再エネ供給会社に契約を変えることが特効薬です。でも半分程度しか減りません。残りの半分は省エネやライフスタイルを見直すことによってなんとか実現できる見込みがつきます。

さて、話が一気にライフスタイルの見直しになってしまいましたが、話を元に戻します。

2023年3月に改訂された「岡山県温暖化防止実行計画」では、国の目標より少ない、39.3%削減となっています。岡山県はみんなが省エネをしていて他の自治体に比べたら、元の値が低いから、低くても良いのではないか? いえ、そうではありません。 実際県民に求められる家庭でのGHG排出目標は、66%削減と明記されているのです。達成できないと罰金が来る? いえ、そんなことはありません。じゃあ達成しなくても安心。 と考えるのはあまりに自分勝手で、その場しのぎの無責任な振る舞いということになります。
自分だけでなく、自分の次の世代、子ども・孫につけを残す行動です。 今の私たちの生活を続ける限り、地球の平均気温は上昇します。1.5℃に抑えなくては、取り返しのつかないことになります。

5年前の西日本豪雨災害が毎年の様に岡山で発生することにだってなります。今、瀬戸内海は瀕死の状態で、海産物が獲れなくなってきています。豪雨災害は稲、野菜の生育に大きな影響を与えます。食費の値上がりは今以上のものなることも十分予想される結果になります。冬に雪が降らず、3大河川の水が渇水状態になることも考えられるのです。

岡山県の目標を部門別に見ていきます。(全国平均は46%の削減です。すべての部門が一律ではありませんが目安として考えてください)削減率が一番高いのは、家庭部門の66%、次に高いのが業務部門(事事務所・ビル、デパート、卸小売業、飲食店、学校、ホテル・旅館、病院、劇場・娯楽場、その他サービス(福祉施設等)の9業種)で51,3%。続いてエネルギー転換部門(発電、石油精製、コークス類製造、都市ガスの自家消費など)が46.1%、運輸部門が34.8%となっています。GHGの中で一番多いのがCO2ですが、このCO2排出で一番多くGHGを排出しているのは産業部門です。県全体の60.2%にあたります。 家庭部門が排出するGHGの割合は5.7%、業務部門は6.5%、運輸部門が9.8%となっています。

排出割合が低い部門ほど、削減率が高く、排出量が多い部門ほど削減率が低いということが分かります。 
なぜ?疑問に思われませんか?

今回の暖化対策実行計画改定に当たっては、地球温暖化防止プロジェクト推進会議という組織において1年に及ぶ検討が行われてきました。
 プロジェクトの委員は、14名(当初) 学識経験者2名、県民団体(内温暖化に関して活動をしている市民団体は1団体のみ)4名、事業者団体6名(水島地区GHG排出大手企業が内4社)、行政代表2名、オブザーバー1名(環境省出先機関)の14名、事務局として 岡山県環境文化部 新エネルギー・温暖化対策室のメンバーが入っています。 
この他に専門委員が途中から外部有識者として関わりました。その専門員は、産業技術総合研究所(産総研):[特定国国立研究開発法人の一つで気候変動と自然災害、先進国が抱える少子高齢化、なおも拡大が続く感染症、緊張の高まる国際情勢と経済安全保障などの社会課題に関して課題解決にむけた活動を140年以上続けている組織]の方で、専門家の立場で岡山県の各部門が最大削減できる計画案を、提案しました。
※委員名簿を見たい方は下記をご覧ください。
https://www.pref.okayama.jp/page/detail-62221.html

上記メンバーの中では、なかなか発言が乏しかったという 委員の中のひとりで、市民環境活動団体の方から、このままでは、他の自治体よりも低い目標で決定するので市民の声を盛り上げて、パブリックコメントがたくさん出るように、協力して欲しいという事で、SDGsネットワークおかやまとして、上記専門家の提案された内容を勉強会する会を開催しました。

パブリックコメントは、2022年12月20日~1月19日までの期間でした。1月に入り、上記講師を招き、市民や学生世代向けに2回の勉強会を開催しました。その中で、各部門の分析と対応策の実施により、計画目標値を上方修正して、国の目標46%削減を達成することは可能であることを確認しました。

ただ、パブリックコメントを書くことは、慣れない人は難しいので、雛形もつくり、参考にしていただきました。 結果、パブコメは42人1団体、168件が提出されました。
その結果はどうだったでしょうか? 残念ながら、当初からの目標変更はありませんでした。

特に削減が一番期待される産業部門の中の水島コンビナートに工場がある企業のGHG削減については、以下のようなパブコメに対する回答となりました。
① 「本県の産業部門からの排出は、鉄鋼業等の素材系産業が多くを占め、これらの産業では、製品の製造工程や、製造に不可欠な高温の熱を得るために多くの温室効果ガスを排出するため、脱炭素化を進めるためには、製造技術を根本的に転換することなどが求められます。このような新技術は研究が進められているものの、現時点では実用化に至っておらず、この度の削減目標の設定に当たっては、こうした地域特性や産業の構造を十分考慮する必要があると考えています。」
② 「大規模排出事業者に対しては、国においてグリーンイノベーション基金により脱炭素を経営課題として大規模なプロジェクトに取り組む企業の支援が行われる一方で、排出企業にコスト負担を求める炭素賦課金や排出量取引制度等のカーボンプライシングの検討等が行われています。
県においては、岡山県温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度により大規模排出事業者に対して自主的な取組を促してまいります。」

その一方で、「産業部門以外の部門の削減率については、国の地球温暖化対策計画において様々な対策を見込んだ上で野心的な目標が設定されていることから、これらの施策にしっかりと取り組み、目標の達成を目指してまいります。」というものです。 これを反映してか、県民がどのような削減行動をとるとどれくらいのGHG削減となるかについては、パブコメ素案にはなかった具体的な数字が第6章で示されることとなりました。

県からのパブコメに対する回答は下記サイトでご覧いただけます。
https://www.pref.okayama.jp/page/839965.html

他県の状況を見てみると長野県では、県民のパブリックコメントで、史上最多の180の意見が寄せられ結果、目標数値があがりました。
当初「IPCC ”1.5℃報告書” が求める 2030 年の正味排出削減目標 ▲45%を上回る▲48%」としていたものをパブコメ後に「日本の脱炭素化をリードする野心的な削減目標 “2030 年までに6割減“ を目指す」
【長野県2030年温室効果ガス削減目標48→60%】となりました。

また、 隣県兵庫県では、産業部門を含む部門別GHGの排出割合はほぼ岡山県と同じです。兵庫県地球温暖化対策推進計画では、2021 年3月時点で、「2030 年度に 2013 年度比 35~38%削減」としていたものを内外の状況変化を受け、2022年3月に改定した計画では2030 年度、48%削減(2013 年度比)
と大幅に目標値を上げました。
「2050 年二酸化炭素排出量実質ゼロ」をゴールとし、県民・事業者・団体・行政等が一体となり、取り組む決意」とのことです。

岡山県でも、 2030(令和 12)年度迄の中間点である 2026(令和8)年前後に計画の見直しを行うこととします。とこの計画の見直しをすると言っています。私たちが取り組むべきことを実施しながら、水島コンビナート企業含む産業部門の動向を注視したいものです。

私たち一人一人がどんな行動をとるべきかについては実行計画の第6章 48~52/54Pをご覧ください。
以下のサイトです。
https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/841081_7968974_misc.pdf

このページは、
4 各主体に期待される取組  (1)県民の取組 として、衣食住・移動・買い物など日常生活における脱炭素行動とメリットを整理した 表 6-4「 ゼロカーボンアクション 30」として描かれていますので、是非ご覧いただき、知人友人、職場で共有し、家庭で実施していきましょう。

「県民一人ひとりが地球温暖化対策への関心と理解を深め、日常生活において、賢い消費者としてあらゆる場面で環境負荷の少ない製品・サービス・行動を選択し、資源やエネルギーを大量消費するライフスタイルから、環境負荷の少ないライフスタイルへの転換に努めることが必要であり、発想や視点を転換し、より快適な暮らしにもつながる点など、取組のメリットを考え、無理なく取組を継続していくことが大切です。」 この8月8日(火)には、岡山コンベンションセンターで、第10回環境教育ミーティングが開催されます。岡山で環境課題に取り組む団体や学校・企業などが出展し、情報収集や交流ができます。
また、イオンモール岡山 6階には 一時閉鎖していた環境学習プラザアスエコが再オープンしました。
ショッピングや食事、映画のついでにも情報収集が出来ます。合わせてご利用ください。

関連リンク

同じタグの付いた記事

中山間地域の高齢化・人口減少について
私は岡山県高梁市の出身です。高梁市は岡山県内有数の高齢化率の中山間地域であり、それ故に多くの問題を抱..