持続可能な社会を考える 「未来につなぐ食と農」

地域課題・社会課題その他

今日は、こんにちは、ゆうあいセンターSDGs&CSR相談員 小桐です。

今回は2022年11月23日に開催された山陽新聞連続シンポジウム「未来につなぐ食と農」とその前に開催された事前ワークショップの内容も含めて、持続可能な食と農について考えます。

農とは少し違いますが、食についてマグロが好きな方にとっては先日朗報がありました。「クロマグロ 東大西洋と地中海の漁獲枠 12%余増へ 過去最大に」 クロマグロなどの資源管理を行っている国際機関は、資源量が回復傾向にあるとして、東大西洋と地中海の来年から3年間のクロマグロの漁獲枠について年間およそ4万トンと、12%余り増やすことを決めました。

 日本に割り当てられた2023年から3年間の漁獲枠は年間3114トンと、これまでよりおよそ300トン増加し、過去最大となり、国内のクロマグロの流通量が増えることも予想されるとあります。 とはいえ、原油高の昨今、遠隔地で捕獲されたマグロは凍結され日本に運ばれます。フードマイレージが高い魚であることには違いありません。
フードマイレージとは、環境負荷を表す指標です。食品が海外から日本に運ばれれば、化石燃料を使った運搬になるので、それだけ環境負荷が高くなり、運ぶ量が多いほど化石燃料を使い、温室効果ガスを増やすことになる。というものです。 魚を例に取れば、できるだけ近海のもの、地元で水揚げされるものを選ぶと、鮮度も高く、環境にもやさしいということです。

今回のテーマである、持続可能な食と農を考える際に、SDGs視点でとらえると上記のような「環境」に関することや難民の方々や途上国における食糧不足における「飢餓」の問題があることに気づかされます。
農産物の収穫量を増やし、育てる際の手間を省くために農薬・化学肥料を使うことで、土地が痩せて作物が採れなくなる問題は持続可能な生産・消費の目標である「つくる責任・つかう責任」や遺伝子組み換え商品などによる「健康」への潜在的な問題も含んでいると言えます。

私達が生き生きと健康であるために、でも地球の裏側の人たちも同じく、豊かな食を得ることが出来るように、自然環境に負荷をかけすぎない農業とは、どんなことに気を付けたらよいのか、また、消費者としてどのようなことができるのか?今後の食のあり方について考えてみましょう。

シンポジウムで紹介された、岡山の高校生たちの「持続可能な農」に関する取り組みの紹介です。
・岡山高校 米栽培
 同校では、コメ作り×エシカル(倫理的)消費プロジェクトが立ち上がり、探究学習において、これまでは、産業廃棄物として処理されていた「カキ殻」を肥料に用いた「里海米」(品種朝日米、商品名:ツバザクラ)栽培に瀬戸内市の邑久町で取り組んでいます。また、邑久高校のコメ作りグループとも交流しており、2022年12月にはイオン岡山で 販売なども行いました。

・高松農業高校は廃棄する植物の葉や茎を使って雑草を抑える取り組みを紹介。植物が化学物質を出して他の植物などに影響を与える「アレロパシー」に着目し、植物残渣(ざんさ)を使った除草剤の代替資材作りを紹介。「トマトの茎葉をペレット化したもので雑草が抑制できた」とその実験結果を発表しました。
この研究は日本植物学会で高校生部門の最優秀賞を受賞しています。今後は農業法人ともコラボが出来そうで、更なる発展が期待されます。

・瀬戸南高は自動操舵(そうだ)システム付きの除草機を使った米栽培、人で不足解消や夏の暑さの予防効果などもあります。除草により収量が上がることも期待され、無農薬・無化学肥料での栽培が実現すれば、今 海洋汚染の問題となっているマイクロプラスチックの元となる「一発肥料:プラ殻に入った除草剤」の削減なども期待されます。高齢化するコメ作り農家にとっても期待される取り組みでした。

・真庭市で、農業法人「HAPPY FARM+R」を営む取締役の中村妃佐子さんからはこれまでの農業のイメージを変えたかったと、20代の女性が5人も働いている、自社の紹介をしました。 「農業を通じて幸せになる」「農業を若い世代につなぐ」ことを目的に設立された同社は、耕作放棄地を利用することで陸の豊かさの確保ができ、安全で質の高い農作物を届けるために栽培技術等の社員教育に力を入れており、女性の雇用を促進し、子育て中の女性も働きやすい環境を整えています。また、野球のユニフォームのような揃いの作業着で明るく取り組んでいることなどの説明もありました。
『農業って本当に楽しい』を次の世代に伝え、担い手の確保にむけた教育として、小学~高校生まで年間300人の農業体験を受け入れ、収穫~袋詰めまでの体験をしてもらっています。農育の大切さを強調されました。

・シンポジウムのパネラーの一人、岡山大名誉教授 小松さんは日本の食料自給率(カロリーベース)が約4割であることを「危機的に低い」と指摘。「農業の担い手は地域社会の担い手でもある。育成、支援を考えなければならない」と発言があり、子育て世代の女性が農業に従事できる環境の意義を強めました。

・笠岡市の干拓地で先端機器を活用した大規模な「スマート農業」を営む農業法人「エーアンドエス」社長の大平貴之さんからは、育苗の自動化やロボットトラクターの導入などにより「品質が向上し収量が増加した。肥料や農薬を減らして生産コストを下げることもできた」と紹介がありました。
上記のいずれも持続可能な農業生産 という点では、それぞれに特徴のある取り組みの紹介でした。

シンポジウムでは、話は出ませんでしたが、大規模干拓地や耕作放棄地などでは、農業+太陽光発電によるWの収入と再生可能エネルギー普及による温暖化対策の強化が期待されています。現状、岡山県では、あまり進んでいませんが、千葉県匝瑳(そうさ)市では、農業を行いながらも、発電は共同組合を作り、収穫量は従来の80%程度でも売電によってそれを補う「ソーラーシェアリング」という新しい農業が展開されていて、新たな視点の農業として今後注目されていくようです。 

次にご紹介したいのが 食と地球温暖化を自分事と捉えた新たな動きです。
地球温暖化対策として世界22か国70人の研究者が提唱する排出量削減実行策の中で、ランキング1位は、冷蔵庫・エアコンなどの「冷媒」物質の変更、第2位が陸上風力発電の増加となっています。驚くことに、3位と4位は食に関係しています。3位食料廃棄の削減、4位植物性食品中心の食生活です。

フードロスは最近マスコミでも大きく取り上げられ、食べ残しをしない、食材を使い切ることなどに取り組む人も増えており、ロス削減は世界で一番食品輸入し、捨てている国、日本においても国民的な取り組みになりつつあります。ここ数年で100万トン以上の削減ができ、520万トンまで下がっています。しかし、第4位の植物性食品中心の食生活は、まだまだ、日本でも他人事である状況と思われます。

フランスでは、グレートリセットという これまでの行動を根本的に見直し、ライフスタイルを変えて、温室効果ガスの排出を抑える行動が始まっています。国内近距離空路の廃止、それに代わる夜行列車の運行。石油採掘権を持つメジャーが、植物原料由来の航空機燃料製造に着手など。

そんな中、食の取り組みとして、 肉食を減らし、野菜給食に取り組む事例があります。リヨン市の小学校給食で、週1回は肉を食べずに野菜の給食にするというものです。保護者会の発案で始まりました。
 牛肉1kgを作るのに、穀物が10kg必要です。豚4kg、鶏2kgと言われています。世界では9億人近い人々が飢餓で苦しむと言われており、その対策にもつながるというものです。さらに牛のゲップからはCO2の21倍の温室効果があるメタンガスが出ます。なんと世界の温室効果ガスの5%をこの牛や羊のゲップが占めているという報告があります。

飢餓対策と温暖化対策という点では、昆虫食が広がりを見せようとしています。東南アジアでは昔からたんぱく源として食されてきました、日本でも長野県などはイナゴの煮つけなどを昔から食べていました。
世界の人口が80億人を超え、飢餓に苦しむ人々がいる中、新たなたんぱく源として注目されているのが、コオロギです。閻魔コオロギではなく、ヨーロッパコオロギという成長が早い種類の養殖が国内で増えています。
飼育に手間がかからず、メタンガスも出ない、コオロギ1kg収穫するのに飼料は、2kgで済むそうです。鶏と同じくらいです。パウダーにすれば、色々な食品とミックスした料理ができるとのことです。エビのような風味がするとのことで、徳島県では、このパウダーを使った給食が始まったとテレビのニュースで、伝えていました。つい最近、NTT東日本がコオロギ養殖事業に参入するという報道もありました。
岡山では、吉備中央町でも飼育されていて、地ビールにも取り入れられているそうです。

持続可能な食を考える時に「旬のものをたべる」ことは重要です。  露地野菜とハウス野菜では、使用 エネルギーが5倍、発生するCO2も5倍違います。 冬の季節のイチゴやトマトなど旬でないものを食べる習慣を見直すことも、自分自身が出来るSDGsの取り組みになります。

最近では、体にやさしいオーガニック商品を中心に取り扱うスーパーもあります。隣県の高松市 厳選というお店では 生産者の顔が分かる野菜でかつ無農薬オーガニックなものを取り扱っています。
自産自消が一番良いのですが、なかなかそれが出来ない環境の方も多いと思います。どのような店でどのような食品を買うのか? 持続可能な食は、消費者の商品選びが大きなカギを握っています。価格比較だけでなく、その商品が作られた背景の情報を知り、選ぶことが持続可能な食のきっかけになると思います。

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