持続可能な社会を考える 「人と環境にやさしいやさいについて」

活動・取り組みその他

今日は、こんにちは、ゆうあいセンターSDGs&CSR相談員 小桐です。
5月薫風に鯉のぼりが泳ぎ、つつじが咲き乱れ、蝶が舞い、草木の若葉がいきいきとする季節を迎えています。
SDGsに関して以下のような記事を最近見つけましたのでご紹介するとともに、少し掘り下げてみたいと思います。

★セブン&アイグループは「持続可能な調達」の実現に向けてGAP認証を取得した野菜の取り扱いを強化プレスリリース
https://www.7andi.com/var/rev0/0004/8403/1224218274.pdf

★日経新聞「福島のGAP認証野菜でサラダやサンド セブンなど販売」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC21CJ00R20C22A4000000/

★すかいらーくグループの「ガスト」で、4月からGAP認証の九条ネギを使ったメニューがスタートしました。
〇たらこ・しらす・九条ネギの和風パスタ  〇大葉おろし和風ハンバーグ
  グランドメニューなので、全国のガストで食べられるはずです。
https://www.skylark.co.jp/gusto/tv/index.html?fbclid=IwAR2z5fvFcPQ7PAVb-IgVQlUQd0X_HWHy6CVGp6aBRFLN9cSx8eXLG5jGR8I
「GAP認証の野菜、どんどん増えて嬉しいですね。」 と筆者は結んでいます。

さて、「GAP認証」ってご存知ですか? 服のGAPは知っているけど 食のGAPは聞いたことがないと言われる方が多いと思います。聞いたことがあるかも?と思われた方は、昨夏に終了した東京オリパラの選手団に提供された食材に関するニュースに触れた方だと思います。

「GAP」って何? それは、GAP(Good Agricultural Practice :農業生産工程管理)というものです。
農産物(食品)の安全を確保し、より良い農業経営を実現するために、農業生産において、食品安全だけでなく、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組のことなのです。
言わば「農場認証」です。

このGAPの取組みを実施することで、生産管理の向上、効率性の向上、農業者や従業員の経営意識の向上に繋がる効果があり、我が国の農業の競争力強化にも繋がります。 そして、この取り組みを、第三者が審査して証明することで、持続可能な農業生産を行っていることが客観的に証明されます。
なので、取引上選択されやすくなる、消費者に安心してもらえる」というメリットがあると説明されています。

気を付けたいのは、『GAP手法によって生産された農産物が特別おいしいわけでもない』ということで
味や品質を保障するものではないと事は知っておく必要があります。スーパーマーケットなどの農産物を購入する企業が、生産農場の信頼性を確認するため、認証機関を通して実施している第三者認証制度とも言えます。買い物をする時点で、消費者がGAPの文字にふれることが増えると、認知度が上がり、良い農家が正しく評価される社会への第一歩にはつながるのではないでしょうか。

さて、このGAPですが、3つの認証スタイルがあるというのです。日本国内での取り組みを見る「JGAP」、アジア圏での農業のあり方を見る「ASIAGAP」、そしてヨーロッパに端を発し世界120ヵ国以上で活用される「グローバルGAP」です。

何がどう違うのでしょう?認証には必ず運営団体があります。そして、対象品目が少しずつ違うのです。
         JGAP            ASIAGAP         GLOBAL G.A.P
運営団体    日本GAP協会         日本GAP協会      FoodPLUSGmbH(ドイツ)
対象品目    青果物・穀物・茶・畜産物   青果物・穀物・茶    農作物全般・畜産物・水産物
国内認証取得件数   4,315           2,379             669
少し前のデータなので認証取得数は変わっていると思います。

GAPの具体的な取組み内容は、2ステップです。
STEP1 農薬や肥料の保管や農機具の整理整頓の徹底、生産履歴の記帳。
STEP2 農場内を点検し、見つけた課題や問題点について、自ら必要な対策を 考えて実行し、その内容を記録・点検して継続的に改善というものです。

もう少し詳しく見ると、JGAP/ASIAGAPを運営する一般財団法人日本GAP協会はGAP認証を通じて、以下の7つの取組の実現を掲げています。
1信頼される農場管理:責任体制のルール化、機械・設備点検・整備のルール化など

2食品安全の確保:生産工程の明確化、異物混入の防止、農薬の適正使用と保管、リスクの評価や対策など 

3環境保全の確保:地球温暖化対策、廃棄物の管理、生物の多様性への配慮など 適切な施肥、土壌浸食の防止、廃棄物別の適正処理、利用 労働安全

4作業者の安全確保:作業者の労働安全対策、労働災害への備えなど  機械・設備の点検・整備、作業安全の保護具の着用

5作業者の人権福祉:労働基準法などの法令順守、人権保護 、差別・強制労働の禁止、健康状態の管理など、労働力の適切な確保、労働条件の提示及び厳守

6家畜衛生の確保:管理獣医師などの健康管理指導、家畜伝染病予防法の順守など 責任者の配置、教育訓練の実施、内部点検の実施

7アニマルウェルフェアへの配慮:家畜に配慮した飼育環境の改善、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の輸送など(横道にそれますが、「アニマルウェルフェアとは、動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態」と定義されています。家畜を快適な環境下で飼養することにより、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、結果として、生産性の向上や安全な畜産物の生産にもつながることから、農林水産省としても家畜の飼養管理の普及に努めているとあります。)

確かに、このような管理をされているといい加減なものを出荷しているのではないということはわかります。
そして、SDGsが解決しようとする 環境(エネルギーも含む)、社会課題(人権、福祉)の他、SDGsに含まれないアニマルウェルフェアまでの配慮を求めていることを知れば、人と、環境そして動物にも優しい取組ということが理解できるのではないでしょうか。
 冒頭で「GAP認証の野菜、どんどん増えて嬉しいですね。」 とはこのような意味があったのです。

3つの種類のGAPがあること、その方向性は同じ方向を向いていることはわかりました。ただ、どんな点が違うのでしょうか?

「JGAPは認証の記載を許しているが、グローバルGAPは認証取得表示を禁止している」
グローバルGAPの場合は、費用を払い認証を受けたにもかかわらず、認証を受けたことを出荷箱や小売・量販店などにおける小分け袋に表示することが許されていない。そのために生産者は、流通業者や消費者に当該農産物がグローバルGAPの認証を取得したものであることの情報を届けることができない。
その背景には、そもそもグローバルGAPの内容は生産者が当然に遵守すべき事項なので、それを表示するなどをことさらに強調し、販促の道具、差別化の手段とするべきではないとの理念が底流としてあると言われています。ただし、契約取引の交渉の際にバイヤーに訴求でき、また信頼して貰えるという大きなメリットがあると考えられています。

認証取得にはお金がかかります。当然コストも上がるのでは?価格に転嫁されるのでは?という疑問も出てきます。 しかし、販売価格については希望価格を伝えてはいるが、現実は卸売市場のセリ値で決定されており、グローバルGAPの認証取得に伴う経費アップ分を転嫁できない価格決定方式になっている。
ということで、値段には影響はないとみることが出来ます。 なんか安心できますね。

なんとこのGAPは「地方自治体が設ける独自の認証制度」も存在しています。
〇東京都GAP:東京都が運営主体となって策定した東京都独自のGAP認証です。2018年より開始され、野菜と果樹を対象にしています。
「東京農業振興プラン」に基づき、持続可能な農業生産と地産地消を推進するために策定された、都市農業の特徴を反映した独自のGAP認証制度であり、他のGAP認証と同様に食品安全や環境保全などを盛り込み構成されています。
JGAPやASIAGAP、グローバルGAPと異なり、東京都内の農家限定の認証制度となりますが、取得審査費用無料かつ更新審査も無料のため、GAP認証として非常に負担が軽くなっています。

〇ちばエコ農産物
GAP認証とは少し異なりますが、千葉県が環境保全と食の安心安全に配慮した農作物認証制度として設けているのが「ちばエコ農産物」認証です。2002年から開始され、認証農産物には以下の5つのポイントがあります。
1化学合成農薬と化学肥料が通常の半分以下であること
2農薬の使用歴などの栽培作業を記録すること
3農産物の栽培前と収穫前の2度チェック
4審査員が実際に田畑に行き、現地を確認
5ちばエコのホームページ内で栽培情報が閲覧可能

地元岡山では、今のところ県の独自認証は無いようです。岡山でGAPの認証を受けた事業者を探して見ると以下のような状況です。
・JGAP    みのる産業(H30) しいたけ 、 ミツクラ(H31) マッシュルーム
・ASIAGAP  ㈱倉敷きのこ園(H28)※Jから変更(H30) しいたけ
・グローバルGAP  JA岡山東赤坂特産雄町米研究会(H27) 雄町米 、 ㈱北原産業(H28)          水耕レタス 、木村式自然栽培実行委員会(H29) 朝日米 、 JA全農おかやまGAP部会 キャベツ生産5経営体が団体認証取得。団体での取得は珍しく全国で2例目 (R3)ということです。

『JA全農おかやまは、同部会から出荷されるキャベツについて、グローバルGAP認証品としてのPRを最大限に行い、販路拡大に繋げていきます。 生産者の青木鷹紀さんは、「GAPに取り組むことで圃場ごとの収量を把握できるようになった」と効果を実感し、「今後は従業員の教育も進め、取り組みを継続させたい」と語りました。』 残念ですが、お店では表示はできませんのでご理解下さい。

個人的には、鶏卵のアニマルウェルフェアが分かると嬉しいと感じています。SDGss視点での食材選びはまさにSDGsを自分事にすることに繋がりそうです。

同じタグの付いた記事

自分の“職能”を活かした新しいNPO支援。 「プロボノによるNPO等の情報発信・運営支援事業」
 プロボノとは、今までの “労働力を提供するボランティア” とは異なり、様々な分野のプロが自分たちの専..