持続可能な社会を考える 「未来の世代のために今の私たちにできること」
活動・取り組み環境
今日は、こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今回は2021年11月にイギリス グラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)
を受けて、これから私たちが真剣に取り組まなければならないことを考えてみたいと思います。
今回のCOPでは議長国のイギリスの目論みは、「温室効果ガス排出削減対策が講じられていない石炭火力の段階的廃止」との表現で合意を目指したのですが、会議の最終盤にインドが反対し「段階的に減らす」との表現に弱まった結果となりました。議長が 「このような展開になり、深くおわびする。だが不可欠なのは文書全体を守ることだ」と謝罪をして、閉幕しました。
日本人は、どのようにこれを受け止めて、私たちは何を行動しないといけないのでしょうか?
このCOP閉幕に合わせるように、NHKが「グレートリセット」というTV番組を放映しました。この番組を通して今後の私たちのとるべき行動を考えてみたいと思います。
5分の短縮バージョンはWEBで視聴可能です。
https://www.youtube.com/watch?v=yEdpjYYDaAc
この番組では、主に以下の内容が紹介されました。 地球温暖化の現状と未来予測(科学者によるデータを基にした予測) 地球温暖化防止のために取るべき概念「グレートリセット」の紹介とフランス等での取り組みの紹介。岸田首相のCOP26での発言と日本のエネルギー政策の今後の課題です。
「グレートリセット」とは、持続可能な社会の実現に向けて「経済や社会を根本から変えようとする考え方」です。
私たちが安心な未来に向け、将来世代のためにも行うべき行動のタイトルとも言えます。そして、SDGsの達成と共に、この10年間が重要とされ、真摯に向き合い、行動しなければいけない具体的な取り組みです。
日本人は、概して 環境 地球温暖化に関する関心が低く、学校教育でも欧州と比べれば非常に断片的で一時的であり、持続可能な社会を考える機会や知恵に触れる機会が少ないと言わざるを得ません。
この事実を前提として、話を進めます。
SDGsの環境に関する目標4つは、日本の現状のままの行動・取り組みでは、ことごとく達成できないとされています。目標13の地球温暖化に関しては、2013年を基準に 2030年に温室効果ガス排出量を46%削減するとしています。特にここでの需要なことは電源構成比をどうするかということです。 日本の大手電力会社は、石炭や天然ガスに依存した発電を行っており、今回のCOP26でも議論された石炭火力発電の段階的禁止については、世界全体は、消極的立場をとっています。
アンモニアと石炭を混ぜて燃焼させることで、コストを押さえ、CO2を削減できるという日本の主張は、国際社会からは支持を得られませんでした。 現状(2019年)の電源構成比は、再エネ:18%、原発:6%、火力76%です。これを、2030年時点では、再エネ:36~38%、原発:20~22%、火力41%にしようとしています。原発から出る放射性廃棄物の最終処分方法は、今でも確立していない現状であることを付け加えます。
2015年のCOP21パリ協定で世界が合意した、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して目標2℃までに気温上昇を抑える目標に対しては、 残り0.91℃です。しかし、その後の研究で、当時努力目標として掲げた1.5度までに抑えないと大変なことになるとして、COP26では、1.5℃の上昇に抑えるという合意ができました。
現状世界では、毎年400億トンの温室効果ガスが排出され、これまでに1.09℃上昇。 これを年数換算すると残り10~11年で 1.5℃を超える計算になるというのです。1.5℃を超えると、人体の健康にも悪影響を及ぼし、腎機能低下、皮膚がん、心臓・肺の疾患、脱水症状を引き起こすとう緊急警告が発せられました。
もちろん、台風の大型化や洪水、干ばつなどの被害により、社会、経済に大打撃を与えることにもつながります。
世界で、一番食べ物を輸入している日本はで60%が海外から運ばれますが、それが安定して続く保証はどこにもないのです。
アメリカでは、バイデン政権のもと脱化石燃料の政策が加速しています。大型パイプラインの建設中止、国有地での新たな油田掘削禁止。経済とのバランスが問題ですが、大きく再生エネルギーに舵を切っていることは鮮明です。 まさに、経済や社会を根本から変えようとするグレートリセットがアメリカでは始まっています。
化石燃料をめぐっては、中国が脱石炭を掲げており、急速に天然ガスへのシフトを始めています。これまで世界で一番の天然ガス消費国は日本でした。2021年にはその立場が逆転することも示唆されており、今後さらにガスの値上がりや調達が厳しくなることが予想されます。
グレートリセットに関してフランスでは、以下のような取り組みが進行しています。
国内の無作為に選ばれた市民150人がリセット案を作成。149の提案がなされました。これをマクロン大統領が政策に反映。例えば、市街地中心部への車両乗り入れ禁止案。パリから近郊の航空便の廃止、代替措置として夜行列車の復活により、CO2の排出は1/15に減少します。
企業にもこの影響は出ています。世界で50カ国以上に石油採掘権を持つエネルギー企業TOTAL(トタル)年商17兆円は、石油依存からの脱却を表明し、航空機や自動車燃料は、食用油から生まれたものにシフトしてきています。CO2を地中に埋める技術も開発されています。(これは日本でも行われています)
グレーリセットは、さらに学校給食にもその影響が及んでいます。 保護者の発案で、リヨン市の小学校は週1回、肉を食べない給食の日を設定しています。 牛や羊のゲップにより発生するメタンガスは、CO2の10倍以上の温室効果があり、実に世界で発生する温室効果ガスの5%を占めているのです。
「温暖化対策には小さな積み重ねが重要。食生活の見直しはその一歩。未来を担う子供たちの教育から変えていくことに大きな意味があるのです。」という保護者のインタビューの声でした。
何かと肉を食べるグルメ番組を放送する日本とは雲泥の差です。最近は日本でも植物由来のハンバーグやから揚げなど様々な加工食品の販売が伸びているとのことです。食生活の見直しもグレートリセットの一つです。
フランスでのグレートリセット案作成にかかわったメンバーの一人は、以下の様に生活を変えたとリポートしています。 自動車をEVに変更した。昼間は省エネのために電灯を使わない、太陽光の利用。そして、その根本にある考えは「いちばん大事なのは、私たちの子どもや孫たちに安心してくらせる地球環境を残してあげること」と発言がありました。 グレタトゥンベリさんを先頭に今若者たちは、将来につけを残さないように、今から根本的な対策を取れと各国首脳や企業代表に求めています。
日本でも、グレタさんの動きに呼応して、若者が立ち上がり始めています。そして、「気候正義」という言葉が生まれています。気候正義(Climate Justice)とは 気候変動の影響や、負担、利益を公平・公正に共有し、弱者の権利を保護するという人権的な考え方です。将来世代だけでなく、現世代の弱者にも目を向け対策を取るという考え方です。
そのために、世界22か国70名の研究者が考えたグレートリセットにつながる排出量削減実行策のランキングがあります。
第1位は冷媒、2位陸上風力発電、3位食料廃棄の削減(世界の温室効果ガス廃出量の8%。1kgの生ごみを燃やすと2kgのCO2発生) 4位肉食を減らす(植物性食品を中心とした食生活)、以下熱帯林、女児の教育機会、家族計画、ソーラーファーム(ソーラーシェアリングと呼ばれる農業と太陽光発電を組み合わせた営農型太陽光発電所も含まれる)、林間放牧(シルボパスチャー)、屋上ソーラー、11位環境再生型農業、温帯林、泥炭地、熱帯性の樹木作物、15位植林、環境保全型農業、間作林(高木を伐採したのち、苗木が生長するまで、その株の間に農作物を栽培する林野)、地熱、管理放牧、20位原子力。21位以下 クリーンな調理コンロ、洋上風力発電、・・・26位電気自動車(EV)31位断熱、32位船舶、家庭用LED照明、バイオマス、竹・・・38位森林保護 40位トラックと続きます。
3位、4位については、意識すれば私たちにも可能な行動であることはお分かりいただけると思います。その他、上記ランキングの中には、出て来ませんが、私たちが出来るグレートリセットの行動として、「服の選び方、着方」にも注意が必要です。「長く着ることができるか」「環境に負荷の少ない素材」を選ぶことが重要です。
綿花栽培では全世界の殺虫剤の4分の1が使われ、この量は全世界で使用される農薬の11%を占めています。紡績や製織では、大量の水とエネルギーが使われ、Tシャツ1着の製造では、約2,700リットルの水が使われ、1kg=ジーンズ1本分の綿を生産するには1万リットル以上の水が必要です。1人分の飲み水10年分を消費と同じです。オーガニックコットン素材で、無染色の衣料であれば環境負荷は少なくなります。
ポリエステルなどの合成繊維は大量のエネルギーを使います。ポリエステルのCO2排出量は綿に比べると3倍近いのです。衣類の製造過程では、水とともに有害化学物質が使用され、そして中国などでは、その一部は河川に放出されて水質汚染を引き起こしています。
フリース1枚は、1回の洗濯で何百万本もの繊維が抜けたという実験結果があり、洗濯によって抜け落ちたマクロファイバーは、河川に流れ込み、海へと至り、海洋生物に飲み込まれて蓄積していくことで、海洋生態系になんらかの影響を及ぼす可能性が指摘されています。
最近では、古着をリメイクして、1着の服を作り、長く着用するということを薦めるアパレルメーカーも登場しています。「服を補修しながら使い、買う回数を減らす。積極的に古着を選ぶ」
私たちが「服を長く着るだけ」で、環境への影響は軽減されます。
温室効果ガスは、洋服の耐用年数が1年から2年に倍増すれば、年間の排出量を24%削減できると言われています。また、バージンコットン1kgが古着に置き換えられるたびに約65kwhの節電になり、ポリエステル1kgあたりなら90kwhの節電になります。
家庭での太陽光発電量は、1日15.65kwhほど(冬場)ですので、どれだけのエネルギー削減になるか理解できると思います。
私たち個人での行動で一番CO2削減となるのは 再エネへの電力シフトです。再生可能な電気供給会社に契約を変更する。太陽光発電の屋根貸しをする。太陽光発電システムを家庭に取り付けるなどがあります。予算に合わせて是非一度検討されることをお薦めします。
子孫の未来のためにもグレートリセットを理解し取り組みたいものです。私事ですが10月より、太陽光発電システムを取り付けました。15年のローンですが、10年後からは電気代は無料となります。
