企業の社会的責任 環境と健康について2~消費の在り方から考える~

地域課題・社会課題環境

Noboru Ogiri

こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今週は、環境と健康について第2回目の情報提供です。

今回は、私たちが、日常的に使うプラスチック製品による環境と健康への影響について紹介します。
岡山県が接する瀬戸内海について、2002年に瀬戸内海沿岸漁協に実施されたアンケート調査では、瀬戸内海沿岸9府県(11 府県のうち岡山県、福岡県を除く)のうち7府県においていずれも、ポリ袋・缶類・プラスチック製品の3種類が量の多いごみの種類上位3種類だったとの報告があります。

みずしま財団による実態把握調査の結果からも、同様の傾向があるとの事です。その中でも、ポリ袋等プラスチック系のごみが圧倒的に多く、約 40%を占めている。その他には、空き缶類が約 10%となっており、これらを合わせると生活系のごみが中心であることが分かる。ポリ袋とは、「レジ袋」と思ってもよいそうです。

さて、このレジ袋を含むプラスチック系のごみはどんな環境影響があるのでしょうか?
実は、海生生物への悪影響があります。生物が本来のエサとごみを区別できずに、誤飲・誤食を繰り返すことで、消化されないごみが、胃などの消化器にたまり続け、エサを食べることができなくなり、死んでしまう場合もあるそうです。

一般社団法人 JEANのホームページにはその影響の写真が掲載されています。  
http://www.jean.jp/m-litter/matter02.html

実は、この誤飲が、私たちにも大きくかかわっているのです。

ポリ袋などのゴミは、漂流、漂着によってその大きさが小さくなります。大きさ5㎜以下のプラスチックを“マイクロプラスチック”と呼ばれていますが、
世界中から海に流れ出るプラスチックの量は、推計最大1300万トンとされています。

そして、その小さくなったプラスチックは、海水中の油に溶けやすい有害物質(PCB類、農薬難燃剤、多くの種類のホルモンかく乱物質などの有機汚染物質)を吸着させる特徴を持つとのことで、食物連鎖の頂点である大型海洋生物や私たち人間がマイクロプラスチックを食べた生物を食べると、生物濃縮により有害物質は100万倍に濃縮されると言われています。
東京湾のイワシ、64匹 中49匹から平均3個の マイクロプラスチックが見つかっています。 東京湾以外に日本近海の50か所以上の場所ででマイクロプラスチックが見つかりました。平均すると1㎥に3個。世界平均の30倍の密度となっています。
これは、2015年10月にNHKクローズアップ現代で紹介されたものです。

日本近海の海洋ごみは国内だけでなく、中国や朝鮮半島、台湾以南の国々からの漂流物も
含まれていると言われています。イワシ以外にも回遊魚として知られるサンマもまた同じ海で生活をしています。サンマの内臓を食べる人も多くマイクロプラスチックの悪影響が懸念されます。たとえ、はらわたを取り出した魚であっても、魚が摂取した細かなプラスチック片は除去できない。「これらの物質は海洋生物に取り込まれ、内臓だけでなく組織内にも広がる」とダルハウジー大学(カナダ東海岸、ノバスコシア州)にある国際海洋研究所(IOI)の上席研究員ピーター・ウェルズは発言しています。

更に危ない微細なプラスチック粒子
普段何気なく使用している角質を除去するスクラブ洗顔剤や歯磨き粉等に使われる微細なプラスチック粒子(直径が0.5ミリ以下のプラスチック粒子)は上記のマイクロプラスチックよりもさらに環境汚染のリスクが高いと言われています。

マイクロビーズのようなさらに小さなプラスチックの場合、食物連鎖の底辺にあるプランクトンまで、体内に取り込む可能性が高いのです。岡山名産の牡蠣にも取り込まれている可能性もあります。それが生物濃縮により、食物連鎖の頂点の生物に悪影響を与えます。

この脅威について、2015年2月に米国で規制法案が提出されたのを機に、欧米の化粧品メーカーが相次いでマイクロビーズの使用について自主規制を発表。
米国の化粧品メーカー「ジョンソン・エンド・ジョンソン」、「プロクター・アンド・ギャンブル」(P&G)、英国「ユニリーバ」、仏国「ロレアル」などは、果物の種子などに素材を転換していく考えを相次ぎ発表しています。
一方、日本では、市場 ランキング上位130製品を調査したところ、マンダムや花王などを中心に、日本では野放しに使われていることがその時点で解りました。

昨年、3月17日に、日本化粧品連合会がマイクロビーズの自主規制を開始し、粧工連の会長名で、『洗い流しのスクラブ製品におけるマイクロプラスチックビーズの使用中止に向け、速やかに対応を図られること』をお願いする旨の文書を、参加会員(約1,100社)に発信し、日本の業界が自主規制の方向に動いたということです。しかし、昨年10月時点では、まだ日本では法規制の具体的な動きはありません。今の所自主規制のスタンスです。

花王グループのホームページでは、国内販売している「ビオレ」「メンズビオレ」の洗顔料、全身洗浄料に使用しているスクラブ剤は、天然由来の成分(セルロース、コーンスターチ)を使用して自社が開発したもので、歯磨きの「クリアクリーン」の顆粒も、天然由来の成分で、いずれも、マイクロプラスチックビーズには該当しません。とあります。
ただし、ごく一部の洗い流すプレステージ化粧品、海外で販売している全身洗浄料のごく一部には、マイクロプラスチックビーズに該当する成分を使用していましたが、2016年末までにすべて代替素材に切り替えたとのことです。

マンダムでは、2017年末までに洗顔料に配合しているマイクロプラスチックビーズを本懸念のないものに代替する方針を定めました。しかし現在はまだ使われています。
上記のように企業・業界は、環境や持続可能な事業活動については、敏感に反応しますが、全ての企業が一斉に同じ行動ができるとは限りません。

環境だけでなく私たちの健康にまで悪影響を与える。レジ袋、マイクロビーズなどの洗顔料や歯磨き類、自分の健康、生物の健康、子孫の健康、海の環境を守るためにも、使わないこと、企業に使用中止を求めていくことは、消費者の責任として必要なのかもしれません。

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