持続可能な社会を考える 「食品ロス」その1
地域課題・社会課題その他
今日は、こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今回は山陽新聞が開催する連続シンポジウム第3弾 「SDGs地域課題を探る」 2022年シリーズの第1回「食品ロス」 について、当日のシンポジウムを深めるために開催された事前ワークショップのご紹介です。 次回は、連続シンポジウムの内容をご紹介します。
事前ワークショップでは、シンポジウム当日のパネラーとは別にフードロス削減に取り組む3つの団体からの活動に関しての情報提供をいただきました。
① おかやまエコマインドネットワーク 赤井 藤子氏
② コノヒトカンプロジェクト 三好千尋氏+スパイダーず(岡山高校)
③ 岡山大学 松井 康弘准教授 +田中 朱音氏(学生)
話題提供① おかやまエコマインドネットワーク 赤井氏
グループ結成は19999年 地球温暖化防止活動を中心にこれまで活動を続けてきて、フードロス削減には2017年から取り組む。2018年は0円キッチン(キッチン付き廃油カーでヨーロッパを巡り廃棄食材料理を届ける映画)&エコマインドマルシェ(無料スーパー)を開催。毎年食品ロスをなくすイベントを開催し、2021年度は、もったいないキッチン上映、赤磐市、吉備中央町でセミナーを開催。
啓蒙ツールとして大人向けと子供向けのDVDを製作。
すぐに家庭で実践できる取り組み
① 3ない運動:買いすぎない、作りすぎない、残さない
② 工夫して料理 冷蔵、エコレシピ、リメイク
③ 店頭割引商品の購入
④ 賞味期限、消費期限での廃棄見直し 消費期限は期限後10%の延長使用は大丈夫。
以下、世界・日本・岡山での食品ロスデータの紹介をされました。
・世界の飢餓人口9億人 日本ではロス量(570万トン:2020)/年 ;600万トン(2019)
・カロリーベースの国産自給率:38%(輸入62%)
・政府のフードロス削減目標2030年に 2000年比50%削減の基準はおかしい。既に2/3の数値は達成しておくべきなので。また、個人では、数字目標を示しても自分事にはなりにくい。
・岡山県の食品ロス量全国ワースト8位(食品関連企業が多いという背景もありそうです)
・岡山市 未開封廃棄ロス 16.5% 食べ残し22%、倉敷市では賞味期限と消費期限の廃棄ロスの調査データあり。京都では食品ロスをお金換算いたデータもHPにて公開。八王子市はごみ分別を徹底し、資源の10%を有効活用。
・岡山県では、企業からのロス量>家庭ロス
・吉備中央町に住む人の回答では、食品ロスは畑に戻し肥料として利用しているので、当事者意識は薄い。食品ロスを燃焼処理する都市部のシステムに環境負荷の影響は大きい。(生ごみの固形分10%、90%は水分、1kgの生ごみ燃焼で2kgのCO2発生)
・ 公民館等での啓蒙を聞きに来る人は意識の高い人。(それ以外の人たちに伝えることが重要。)
話題提供② コノヒトカンプロジェクト 三好千尋氏
2020年コロナをきっかけに 笠岡で困っている飲食店を支援する為のマルシェがきっかけ。
・地域の飲食店から残ってしまうお弁当を 貧困家庭に届けることで、経済貧困だけでなく孤立する子ども達の心の貧困の存在を知る。 日本の子どもの貧困は6人に一人(15.4%)
・ホテル業界の衰退と共に高級食材が余り食材を廃棄している企業が困っている事を知る この双方の問題の解決策を考えた。
①飲食店の余る食材を有効活用(缶詰づくり:廃棄される肉や魚を安く買い、野菜と煮込み缶詰に)
② 一缶+2合のご飯を混ぜればお腹いっぱい
③ 心が豊かになるコミュニティづくり
小学生35名 に対し、10缶使いご飯に混ぜて提供すると完食してくれた。
このプロジェクトの広報に協力する 岡山高校 スパイダーずは、学童保育 出張みんなと遊び隊をする中で「フードロスイベント」を就実、後楽館、JKnoteなど他の高校の生徒と協働で実施したり、みんなでなくそうフードロスの動画も作成オンラインイベントで1200人に伝えるなど幅広く活動した。活動を通して、「廃棄食材の有効活用が出来ることを知ると共に小学生に触れ合うことで、フードロス削減のことを伝えることが出来た。」という感想を持った。また、同グループは、岡山初開催のSDGs取り組みを表彰するSDGsイベント「BeLive」にて優秀賞を受賞。
現在このプロジェクトは、子ども食堂や支援が必要な人に無償提供をしていて、一般販売はしていない。採算ベースには乗っていない。今後、里海米とコノヒトカンをセットにして販売する予定もある。
話題提供③ おかやま食品ロス大作戦 (岡山大学の授業の一環)
発表者は田中 朱音さん 岡山大学SDGsアンバサダーのメンバーによる学生発案の講義。食品ロスに関しては、岡山県は推進計画がないので、農水、環境、経産省や30自治体の食品ロスデータを集め、ヒヤリング調査を実施し、岡山県と岡山市にパブリックコメントを提出し、県とは意見交換も行った。5年間毎年削減目標を策定するとの返事があり、県として食品ロスのマッチングアプリを作る予定との返事も貰えた。
次に、指導する松井准教授からは、事業系食品ロスを有効に活用するためのマッチングの行った大学院生の研究の紹介がありました。排出者のデータは、スーパー1社より1カ月間のデータを入手、食品ロスを受け入れて食品を作る需要者として入所型の3施設(障碍者、高齢者、児童養護)をピックアップして計算したところ、1.9万トンのニーズに対して県内で1万トンの供給可能量がある。受給のランクが高いものは野菜、穀類、乳製品類が共通している。マッチング率は16.6%ほど。上記施設とは別に生活保護受給世帯24000人とのマッチング率は89%とこちらが高かった。 店から半径1.5km以内の居住想定
食品ロスとなりそうな商品を安価で割引販売する「タベスケ」というマッチングアプリが姫路市で運営されており、利用者が取りに行き、安く買える点では、このアプリの活用が期待される。一方メーカー・小売り側からすると「食品ロスという言葉がブランド価値の低下」また、一般消費者に広く余剰食品の「割引販売推奨への懸念」もある。
視点を変えて、環境面で考えると食品ロスによる廃棄で発生する温室効果ガスは、月に14000kg発生するが生活困窮者に届けることが出来れば、2000kg/月減らすことが出来る。金額面から見ると、焼却費用に40万円ほどかかる一方、困窮者へ食品を届けるには、アプリ使用料と人件費で130万円ほどの費用がかかるとの試算(データの精査中)。その際のマッチング率は89%ほど。現時点でのまとめでは、受益者にいくらかの費用負担をしてもらうことが継続しやすいのではないか
ただ、食品ロス発生現場と需要者がマッチするには食品の運搬が必要、誰が負担するかも問題となっている。北長瀬コミュニテイフリッジでは、卸業者・運送業者が協力して仕組みを作り、この問題をクリアできた。
また、岡山県年間1万トンのマッチングには食品の量と内容が一致する必要がある。そのために、幅広い方が関わり数多くの場所でのマッチングができるようになる必要がある。
松井先生からは、食品ロスが発生しないようにリデュースが必要。そのためには、賞味期限の1/3ルールの改善が必要で業界の対応変化が必要との指摘がありました。
食品ロスの専門店舗エコイートが14店舗で関西、首都圏などで全国展開してきている。 1~2割の割引販売が一般消費者にも受け入れられつつある。タベスケのようなマッチングアプリが大きな役割を果たすのではないかという。業界での賞味期限1/3 ルールが改善されるとさらにロスが減るのではないか。
県などの行政が食品ロスの方向性を明確にするとよいのではないか。また、県と市に出したパブリックコメントではリデュースが一番大事として、食品ロス多量排出事業者(小売以外)8社や排出寄与率の高い業種で重点的に進めると良いのではないか 温室効果ガス削減にも効果が高いと松井先生が指摘されました。
次回は、この議論を踏まえてスーパーハローズの太田商品管理室長、フードバンク岡山の糸山理事長、フードロスを有効活用するため供給者と需要者の間を取り持って運搬を担うフードシェアリングジャパン成田氏のお話しを伺います。
