「生物多様性の10年」終了 わたしたちはこれからどうあるべきか
地域課題・社会課題環境
こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今回は、私たちの暮らしを支える「環境」の中で、農業や漁業にも関係する、生物との関わりに関しての状況報告とこれから私たちが暮らしにおいて考えるべきことをご紹介します。
今から10年前の2010年愛知県では、生物多様性に関する国際会議やイベントが開催されました。その中で2020年までの20の目標をもつ愛知目標が採択されました。
それから10年が経過し、9月15日愛知目標の最終評価を記した「地球規模生物多様性概況第5版(GBO5:Global Biodiversity Outlook5)」が発表されました。
生物多様性とは、地球上には、様々な地域があり、そこにはその場所特有な環境があります。そして、その場所には様々な種類の生物が存在しています。生物は食う・食われるなどの関係もあり、その地域ごとに環境を含めた生態系を形成しています。 その自然な様々な在り様の中に多種の生物が存在する状況を生物多様性と呼んでいます。
しかし、その生態系は、私たち人間が数を増やすことによって、農業や漁業、人為的な開発で生物の生息域を破壊や変更しており大きな負荷をかけられています。この負荷をできるだけ小さくしてその地域のあるべき生き物の関係を守ろうとするのが2010年に採択された条約です。
人間だけが得をするのでなく。生きとし生けるものの存在を尊重して様々な生物がすみ続けられる地球を維持していこうというものです。
そして2020年9月15日、この10年間の世界の活動成果をまとめた『地球規模生物多様性概況第5版』(GBO5)が発表されました。
https://www.cbd.int/gbo5
この条約の達成に関して日本自然保護協会は、以下の様にコメントしています。
大きくは20の目標、細分化すると60の要素が挙げられていたが、このうち、10年間で達成できたのは7要素、すなわち全体の12%だった。そして、20の目標のうち、構成要素をすべて達成できた目標は何とゼロだった。
一つ以上の達成要素を達成できたのは6目標(外来種侵入ルートの把握、保護地域の拡充、遺伝資源利用の利益配分の仕組みの構築、国家戦略の策定、科学技術の推進、資源の倍増)あったものの、完全に達成できた目標は一つもなかったということを、私たちはとても深刻に受け止める必要があるのではないか。
このことについて、企業の生物多様性の取り組みに詳しいサステナブル・ブランド・プロデューサー 足立直樹さんは以下の様に解説しています。
私たちのこの10年間の成績は、生物多様性について言えば完全に落第点と言わざるを得ません。次の10年は、この反省をもとに、さらに戦略的に、さらに真剣に、課題解決に取り組んでいく必要があります。
ところでこの間には、SDGsという2030年までの新しい目標も作られ、こちらは少なくともかなり認知度は上がっているが、2030年までにSDGsの達成と同時に生物多様性についても今の流れを逆転させ、保全、さらには回復していくために、このレポートでは今後は8つのテーマにおいて変革を起こすべきだと提案しています。それは、土地と森林、淡水、漁業と海洋、持続可能な農業、食料システム、都市とインフラ、気候アクション、そしてワンヘルスです。
ワンヘルス(One Health)という新しいキーワードです。今年、世界中を襲ったコロナパンデミック。こうした野生生物由来の感染症が近年急増しているのは、経済活動の急拡大と同時に生物多様性が失われていることに原因があると言われています。
生物多様性は食だけでなく、すべての人間活動を支える「基盤」です。これなしには、私たちの日常生活も、健康も、そして経済もありえません。コロナでそのことを痛感した私たちは、人間の命と健康だけでなく、健全な生活、あらゆる生きもの命、そして生態系システムの健全さはすべて繋がっており(One Health)、それを同時に維持することを目指そうという考え方です。
私たちにとって最も重要かつ基本的な産業である農業や漁業、そして食品産業が、実は非常に環境負荷が高い産業であるということです。
しかし、私たちは食べ物を作り、それを食べることなしに生きながらえていくことはできません。ですので、農業や漁業、そして食料システムを持続可能なものに作り直すことがこれからの大きなテーマとして注目されるようになっているのです。
農業や漁業と言うと、日本では何やら古臭い、成長などあり得ない産業かのように思われがちです。しかし、それは誤解です。これらを変革していかないことには私たちの未来がないことが明らかになり、そのための変革もすでに様々なところで始まっているのです。
私たち人間も含めた生命システムが大きな危機に直面する中、その生命システムそのものをもう一度健全なものに作り直すこと、そしてそれに私たちがどれだけ真剣に取り組むことができるか、そのことに私たちの将来がかかってる。GBO5(地球規模生物多様性概況第5版)はそのことを私たちに明確に突きつけているのです。
名古屋でのCOP10では、2050年に向けての中長期目標として「自然と共生する世界」というビジョンも採択されています。ここには日本人の古くからの自然観が強く反映されています。自然と共生していたかつての日本人の生き方を現代に再び蘇らすことができるか。そこに古くからの知恵と新しい技術を融合させることが、今私たちに求められていることだと思います。
足立さんとは別の言葉で、日本自然保護協会は以下の様に言っています。
新型コロナウィルス対策も、東日本大震災の復興も、短期的な暮らしや経済の視点で意志決定をし、長期的に社会や経済がよって立つ自然の豊かさを二の次にした決断がなされてきました。GBO5が掲げる「土地利用、農業、淡水、漁業、食料システム、都市とインフラ、気候アクション、ワンヘルスアプローチ」の分野で、生物多様性をトレードオフにしない政策形成は日本でも必要となるでしょう。
日本自然保護協会サイト
https://www.nacsj.or.jp/2020/09/21770/
1.コロナ危機に立ち向かった人々を称え、市民社会の力を高めよう
2.コロナ危機の混乱を記録し、学び、次の社会に活かそう
3.今後の社会・経済の復興を、持続可能な社会の発展につなげよう
4.新たに生まれたライフスタイルの可能性を育てよう
5.エネルギー、食料、生活用品などを地域でまかなえる新たな社会を構築しよう
6.人と自然の新たな関係を構築しよう
7.未来のコロナ危機の発生と拡大の防止に世界全体で取り組もう
