「SDGsに関するグローバル・レポート 2019」の概要2-2
地域課題・社会課題その他
こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今回は、前回に引き続き、「SDGsに関するグローバル・レポート 2019」の概要の後半です。今後、取り組むべき6つの仕事(エントリーポイント)はどんな状況にあるのかをご紹介します。 SDGs達成に向けた「人間活動と自然界の関係を裏付ける科学的現実」です。 理解を深め、解決のための行動の情報としてお読みください。
◆今後取り組むべき6つの仕事¬=「エントリーポイント」(これをすれば、個人、自社・自組織、社会も、地球も持続可能になる →これをしないと生き延びられない。
世界の政治家や政策立案者は、これらに十分留意する必要がある。
A. 人間の福祉と能力
イ.現状:①極度の貧困層(1.9 ドル未満で暮らす/人/日)は 2018 年に世界人口の 8.6%を占め、その半数以上がアフリカのサハラ以 南と南アジアの 5 カ国に集中
②貧困は、女性(ジェンダー不平等→貧困女性の状況を一層悪化)、 先住民、少数民族、障がい者(社会経済的格差)に集中
③13 億人所得貧困、不健康、教育水準の低さ、水や衛生へのアクセス欠如等は重複する傾向
④40 億人の人々は、経済的・環境的危機や気候変動、武力 衝突など再び彼らを極度の貧困に押し戻すおそれのある事象に対し、依然として非常に脆弱
ロ.解決のための行動
①すべての利害関係者は、質の高い基本的サービス(健康、教育、水、衛生、エネルギー、 災害リスク管理、情報通信技術、適切な住宅、社会保護)の普遍的提供並びにアクセスを通じて、様々な側面にわたりはく奪状態の撲滅とレジリエンスの構築に貢献すべきである。
・各国政府、地方政府、自治体そして地域社会は、貧困と脆弱性が集中する層に的を絞った対応を行い、最も取り残されやすい人々(女性や女児、 障がい者、先住民等)に特別に配慮する(基本的権利の格差縮小と機会:防災・減災をはじめとする自然災害からの保護に注力すべき)
②政府は、機会への平等なアクセスの保証、法的・社会的差別の撤廃ならびに能力開発への投資を行う必要
B. 持続可能で公正な経済
イ.現状:①経済成長は国民所得を大幅に増加させている。その結果、人的、社会的、 経済的福利は向上するが、人間社会と環境への影響は現在のところ持続可能ではない。
②GDP(1年間に生産されたモノとサービスの付加価値)を人間開発のための経済政策に唯一もしくは主要な基準として使用していることが問題。
③モノやサービスの価格には、環境中に排出される廃棄物等の負の外部経済の全コストが反映されない
④世界の一人当たり年間資源使用量は 2060年に18トンに達し、それとともに、温室効果ガスや工業用取水の増加、農業用地の拡大といった持続不可能な影響がある。
⑤2017年には世界人口の最も裕福な1%の所有する資産が世界全体の資産の約33%に相当、最も貧しい 25%の層のシェアはわずか 10%
⑥オートメーション(熟練工による作業を含む)の増加は、不平等を拡大し富と権力のさらなる集中をもたらすなど、多くの人の状況を悪化させる
⑦労働市場における男女間の不平等
⑧所得、富そしてジェンダー間の不平等は、幼児期の質の高い栄養の摂取を困難にし、教育や医療への不平等なアクセスを拡大、機会の不平等につながり、結果として次の世代に引き継がれていく。
ロ.解決のための行動
①すべてのステークホルダーは、GDPの成長と環境資源の過剰使用とのグローバルな分離を実現するために協力すべき
・環境への影響がはるかに小さいモノやサービスの消費への世界的なシフトによって、均衡が図られることが必要
・現在の生産と消費の形態、そして現在の水準の不平等を存続させることは、「2030 アジェンダ」全体の達成を脅かす。(基本的なサービスへの)はく奪を存続させ、不平等を生み、地球環境コモンズを枯渇させ、不可逆的な損害をもたらす恐れがある経済成長と生産・消費のパターンから緊急に移行することが必要
②市民社会と民間部門からの支持を得て、政府は、生活水準と将来への機会をより高いところで結合させ、国の内外で富と所得の不平等を減少させる
C. 食料システムと栄養パターン
イ.現状:①食料システムに起因する気候と環境への影響もあり、また、健康的で安全な栄養はすべての人にはいきわたっていないため、今日のグローバル食料システムは持続不可能
②8 億 2,000 万人以上が依然として、飢餓状態にある。
③世界のほぼすべての地域で肥満と過体重の増加が見られる。世界では、20 億人の成人が、5 歳未満 の子供に限れば 4,000 万人が太りすぎ
④10 億ヘクタール単位の土地の劣化がみられているが、加えて、毎年 1,200 万ヘクタールの農地が食料生産に使用できなくなりつつある。
・現在の農法(agricultural practices)は、水環境の富栄養化、地下水の汚染、土壌酸性化、大気汚染につながる可能性
・現代農法は、温室効果ガスの一種である亜酸化窒素(N2O)の 2011 年における世界的な排出の60%を占める。温室効果ガスの総排出量の19~29%以上を占める。
・食料価格の変動と契約や貿易協定が非対称。途上国にいる世界の7 億 5,000万の小規模農家にハンディキャップをもたらし、収入の大部分を食料に費やしている貧困世帯に影響を与える。
・旧態依然のやり方(business-as-usual=以下、BAU)シナリオの下では、推定で 6 億 3,700 万人が栄 養不足になり、生産の増加に伴う環境への影響は、SDGs 達成の機会を排除すると予想される。さらに、害虫や作物の病気は、世界の食料供給をリスクにさらす。しかし、化学物質の投入量を増やしてそれらを管理しようとすると、多くの環境関連の SDGs 目標の達成を危うくする。
ロ.解決のための行動
①環境への影響を最小限に抑えながら、世界中で健康を促進し、栄養失調を解消する食料及 び栄養システムに移行する必要がある。そのためにすべてのステークホルダーは、既存のインフラストラクチャー・政策・規制・規範・選好に大きな変革をする必要がある。
・健全な土壌の回復などの技術的改善その他の緩和対策が不可欠
・食料生産方法の技術革新は、環境に優しく健康的な 生産システムに移行するための前提条件
・生態学的農法とは、地元や先住民族の文化と 知識に深く根ざし、中小規模の農場に基礎を置く
②各国は品質を改善し、レジリエンスを高め、環境への影響を減らすために、食料の消費に関連するバリューチェーン全体に対して責任を負わなければならない。先進国は途上国の持続可能な農業の成長を支援する必要がある。
D. エネルギーの脱炭素化とエネルギーへの普遍的アクセス
イ.現状:①サハラ以南のアフリカでは 10 億人近くが電気を利用できていない。
②30 億人以上が汚染物 質を排出する固形燃料を使って調理しており、推定で毎年 380 万人の早期死亡の原因となっている。
③バイオマス燃料を利用するために、女性と子供が週に何時間も費やして、伝統的なバイオマスの収集・運搬を行う。
④発電・熱製造・輸送は化石燃料に大きく依存している。世界の温室効果ガス排出に占める発電の割合は 40%、これら全体の合計では約 70%を占める。
⑤再生可能エネルギーの割合のさらなる増加、水素やその他のエネルギー貯蔵技術などのオプションを含む電気の輸送・配電システムの近代化、さらに、エネルギー最終利用の電化の促進。
⑥トラック・船舶・航空機の需要は、急速な上昇軌道にあり、輸送用の石油需要全体を継続的に押し上げている。世界の旅客需要(旅客キロで測定)は、2015 年から 2050 年の間に 2 倍以上になると予想されており、その大部 分の成長は開発途上国で発生する。
⑦1965 年から 2015 年にかけて、世界の一人当たりのエネルギー消費は石油換算で 1.3 トンから 1.9 トンに増加したが、個人の平均消費量は先進国では途上国の3 倍から 4 倍となっている。
ロ.解決のための行動
①すべてのステークホルダーは、バイオマスを調理に使用する従来の方法から脱却し、クリーンな調理法を政治的最優先事項とすると共に、クリーンな電気を加速度的かつコスト効率良く提供することで、手頃な価格で信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的なアクセスを確保する必要がある。解決策として分散型の再生可能エネルギーを活用するなど、クリーンで信頼できる現代的エネルギー源を促進する。
・電化は、特に地方における汚染を削減することで便益をもたらす。しかし、気候目標を達成する方法として電化の可能性を最大限に引き出すのであれば、電力供給を脱炭素化するための追加措置が必要
②国際及び国内の団体やステークホルダーは、世界のエネルギーシステムを再構築するために協力する必要がある。炭素価格の導入や化石燃料補助金の廃止などを通じてパリ協定の目標を達成するために、今世紀半ばまでに CO2排出量を実質ゼロに移行し、目標7に向けフルに参加する必要
・総エネルギー消費の 80%を熱利用と輸送が占めることを考慮すると、これらの分野で再生可能エネルギーの取り込みを加速するための特別な努力が必要。
・再生可能エネルギーの割合のさらなる増加、水素やその他のエネルギー貯蔵技術などのオプションを含む電気の輸送・配電システムの近代化、さらに、エネルギー最終利用の電化の促進
・公共交通機関と低速移動(歩行や自転車など)の促進は、輸送及びエネルギー部門の脱炭素化のための引き続き重要
・分散型再生可能エネルギーを含むエネルギーミックスの状況に応じたものである必要
E. 都市及び都市周辺部の開発
イ.現状:①2050 年までに、都市には世界の人口の約 70%が住み世界の 85%の経済 生産をすることになる。
②都市に住む人々の 90%は、WHO の大気環境基準(粒子状物質 1 立方メートルあたり 10 マイクログラム(µg/m))に適合しない空気を呼吸している。
③都市が必要としている水源域は地球の表面の41%を占めているが、物理的なフットプリントである都市の土地面積は 2%しか占めていない。
④化石燃料の燃焼による世界の温室効果ガス排出の70%は都市によるもの
⑤2050年までに砂・砂利・鉄鉱石・石炭・木材などの原材料を年間900 億トン消費することになり、これらの有限資源の枯渇に不可逆的な結果をもたらすことになる。
⑥都市は深刻な所得格差と、健康・食料の確保・住宅・教育・有意義な社会的・文化的生活・ 充実した仕事へのアクセスにおいて極端な不平等をもたらす可能性がある。
⑦世界的には都市人口の35%が地方自治体の廃棄物管理システムにアクセスがない。
⑧サハラ以南のアフリカでは、都市人口の半分以上(56%)が現在スラムに住んでいる。北米及び欧州の多くの都市には、富裕層と貧困層を隔てる大きな所得格差が存在し、時にはそれが半径数キロの範囲でも見られる。
ロ.解決のための行動
①都市が十分な情報を持った市民の参加を得て、効果的で証拠に基づいた包摂的で参加型の政策立案に関与できるよう、中央政府は都市に自治権と資源を与えるべきである。
・都市はカーボンニュートラルになる必要
・都市は、コンパクトで、女性・若者・障がい者・その他の脆弱な人々を含むすべての人にとってバリアフ リーで、十分な公共交通機関と(自転車のような)主体的な移動オプションがある。また、すべての人に適切な仕事を提供する豊かな経済基盤があり、アクセス可能なデジタルインフラや居住・商業・教育スペース、緑の公共スペースといった混合的な土地利用がある都市
・生物多様性を保護し、人間の健康と福祉を高め、気候へのレジリエンスを強化するために、人と自然が密接なつながりを持つ「自然都市」を育む。住みやすい都市は、技術を使用してより効率的で公平にサービスを提供するスマートシティ
②中央政府と地方自治体当局は、民間セクターと緊密に協力して、人間中心で貧困克服のた
めの政策と投資を促進し、適切で持続可能な仕事・水・輸送・エネルギーと衛生・すべての廃棄物と汚染物質の効果的な管理といった重要なサービスへのアクセスを、持続的かつ普遍的に提供し、住みやすい都市を構築すべきである。また、個人とコミュニティも持続可能な都市開発の推進に積極的に寄与する必要がある
F. 地球環境コモンズ
イ.現状:①コモンズは、生物圏(地球規模の生態系)の機能に貢献し、人間の生存と福祉に不可 欠である。地球上の条件は、すべての生物(生物圏)と気候システム間の相互作用によって形成される。その結果、人間の活動によって引き起こされる生物圏の機能の変化は、最終的に地球全 体の環境条件に反映される
②「地球は複数の人為的な要因によって大きく変化しており、生態系と生物多様性 の指標の大部分は急速に低下している」と述べている。地球の陸地表面の 75%が大規模に変化し、海域の66%で累積的な影響が拡大しており、湿地の85%以上が失われている。
③生物多様性が失われると、野生植物を新しい作物として栽培したり、遺伝子改良に使用し たりする将来の選択肢が永続的に減少する。また、失われた種が病気・害虫・気候変動に耐性を持っている可能性
④生物多様性の損失は特にひどく、世界の種の絶滅率は過去 1,000 万年間の平均よりも数千倍から数百倍も高く、ほぼ 100 万種がすでに絶滅の危機に直面している。花粉媒介植物の多くは数が減少し、絶滅の脅威にさらされ、食用作物の75%の生産が危険にさらされている。人間の使用のために改良された植物や動物の地域的な多様性や品種も消えつつある。
⑤生物多様性の損失は、資源の乱獲・化学汚染・土地の分断・外来種の侵入・密猟・プラスチック廃棄、そしてとりわけ気候変動など、人間の活動により生じる相互に関連する負の外部性によって引き起こされる。
⑥地球環境コモンズの他の構成要素も脅威に晒されている。温室効果ガスの排出・大気汚染・成層圏のオゾン層破壊・残留性有機汚染物質によって大気システムが劣化している。コモンズ全体は相互に関連しているため、これらの要素は海洋ならびに陸域の生態系に深刻な悪影響を及ぼす。
⑦気候変動は、極暑・豪雨・洪水・地滑り・海面上昇・干ばつなどの危険の強度を高め ながら、生態系の基盤・調整・供給サービスを混乱させる。
⑧大気汚染は、世界人口の 91%が WHO の汚染物質のガイドラインを超えた大気を吸っている。WHOによると、屋内及び屋外の大気汚染により、年間推定 800万人が早期死亡している。
⑨海洋は、人々に食料を供給し、人々が生計を立てられると同時に、生息地を維持し、生物多様性と沿岸地域を保護し、炭素吸収源としての役割を通じて気候変動を調整することができる。
・温暖化そのものは、炭素の吸収によって引き起こされる海洋酸性化と相まって、サンゴ礁を破壊し、生物多様性・地域の生活・沿岸の保護に影響を与える。乱獲と海洋酸性化は4,000 万人の漁業従事者の生計を支えているが、彼らの生計を脅かす。
・海洋に流れ込むごみ・下水・プラスチック破片・人為的ナノ粒子・肥料・危険な化学物質や油は増大している
⑩土地のシステムについては、世界の森林は驚くべき速度で消滅している。その殆どが熱帯地域(南及び中央アメリカ、サハラ以南のア フリカ、東南アジア)であり、そのサイズは南アフリカの面積に相当する。これらの森林は、農業・ 採掘性の資源へのアクセス・都市化などの理由で伐採された。
・森林破壊を回避して炭素を吸収することは、植林するよりも効率的である。既存の老齢林を保護することは、生物多様性・文化及び生態系サービス・気候変動の緩和及び適応に、同時に共利益をもたらす。
⑪資源の枯渇による影響は、淡水の利用可能性の場合についても明確に観察される。2025 年までに、18 億人が絶対的な水不足を経験し、世界の人口の 3分の2 が水ストレス状態にあると予想され、干ばつと水不足は、すべての自然災害の中で最も深刻かつ広範なものと考えられており、長期にわたり経済・健康・自然に損失をもたらす原因になる。
ロ.解決のための行動
①政府・地域社会・民間セクター・国際的な関係者は、「持続可能な開発目標」を達成すると同時に、自然資源の保護・回復・持続可能な利用に必要な変革を早急に達成しなければならない。
・劣化した生態系の土壌を復元することは、年間最大30 億トンの炭素を貯蔵する可能性があると推定されている。低排出農業・アグロフォレストリー・森林や泥炭地などの高炭素価値の生態系の回復などの気候スマートな土地管理の実施には、ほとんどの場合、適応のコベネフィットが伴う。
②政府は、環境の外部性、特に地球環境コモンズに影響する外部性を正確に評価し、価格設 定・移転・規制・その他のメカニズムを通じて使用パターンを変更する必要がある。
◆まとめ 漸進的な変化ではなく、抜本的変革が必要
4 年に一度の「持続可能な開発に関するグローバル・レポート」の初版は、究極的には、世界に向けて以下の 3 つの最終的な行動への呼びかけを行うものである。
①多国籍機関・政府・公共機関は、プログラム・計画・予算を決定する手続きの方針・枠組みとして明示的に SDGs を採用すべきである。
・「2030 アジェンダ」の実施を加速するために、それらの組織は、資金・国際的な約束に従った政府開発援助・技術などの重要な資源を 6 つのエントリーポイントに振り向けるよう特別な注意を払うべきである。
その際には、目標・ターゲット間の関連性についての知識を駆使し、共通利益の実現とトレードオフの解消へ貢献することが重要である。国際連合などの国際機関や地域機関は、国々においてSDGs のフレームワークの利用から得られた情報の交換や教訓の普及を促進すべきである。
②変化のための4つの手段―ガバナンス・経済とファイナンス・個別または共同の行動・科学と技術―は組織変革をもたらすよう連携して配置され、結合されるべきである。
すべての行動主体は、相互に調整した行動を行い、政策の一貫性の確保や産業分野間の連携を優先的に対応すべきである。
③すべての国や地域は、それぞれに固有のニーズや優先事項に対応した持続可能な開発の ための統合された経路を設計し、速やかに実行すべきである。さらに、必要な地球規模の変革にも貢献すべきである。

