企業の社会的責任 労働慣行について
地域課題・社会課題働き方
Noboru Ogiri
こんにちは、ゆうあいセンターCSR相談員 小桐です。
今週は、先々週から先週にかけて新聞でも紹介されている「残業」に対する企業の考え方と、事例をご紹介します。
これまでに、何回かご紹介している企業を含むすべての団体に適用可能な「社会的責任」の国際規格ISO26000では、「労働慣行」が7つの中核課題の一つに取り上げられています。
労働慣行は、社会・経済に大きな影響を与えます。組織が雇用を生み出し、労働者に賃金を支払うことで生活水準が維持・改善していくという「労働慣行」は、企業、労働者とその家族、また派遣労働や委託先の労働者にも大きな影響をもたらしています。「労働は商品ではない」という基本原則が世界共通の考え方です。
その為には、企業は関係する法律を順守することが最低条件として必要です。そればかりでなく、労働条件や労働環境に関して、組合や従業員と話し合う場を設け、双方にとって有益な組織づくりに向けて協議する事が求められています。同時に人材育成制度を設けることで従業員の能力を高める仕組みを持つことは双方にとっての利益に繋がります。
しかし、現状日本では、大手企業においても悲惨な事態が起きています。新入社員など経験の浅い社員の過重労働による自殺や、職場からの離脱、また中間管理職における長時間労働、持ち帰り残業を原因とする自殺問題などこの2週間で違法労働行為に関する記事が3回も報道されています。
厚生労働省が2016年4月から全国10059か所の事業所を調査した結果、4416所が長時間労働等で法令違反をしていたことが判明しました。そのうち、100時間を超える長時間労働をさせていたのは、2419か所にも上ります。同省は、月80時間以内の労働時間になるように指導をするとしていますが、それでも1日4時間を超える残業時間であり、とても労働者が身体的、精神的に安全で健康な環境・条件を満たしているとは言えない基準と言えるのではないでしょうか
新聞で報道された悪い事例は、三菱電機が博士課程を卒業した新入社員に対し、上限の60時間を超える78時間以上の残業をさせ、かつ申告を少なくするように指導していました。また、この社員は1か月以上休めず、窮状を訴えても上司からは、罵倒され、ついには自殺を考えるほど追い込まれました。まるで電通の事件と同じです。
また、管理職における自殺事件が関西電力で起きています。高浜原発に勤務し、原子力規制委員会の審査対応を担当していた課長職の社員が持ち帰り残業も含め、最高、月200時間を超える残業、平均でも100時間を超える残業をしていました。厚生労働省は関西電力の社長を出頭させ指導しました。
社員の命より、自社の利益を優先させる姿勢が如実に出た事件です。国民の多くが原発はいらないという中、東日本大震災の福島第一原発の事件の検証も十分しないまま、原発を稼働させようとする政府にもまた、責任の一端があると言えそうです。
一方、岡山の地元企業紳士服のはるやま商事は、今年4月より、残業ゼロの社員に「ノー残業手当」を支給すると発表しました。残業をした社員でも、15,000円のノー残業手当に満たない社員は調整手当を出すことになっています。社員全員で仕事を効率的に行い、残業をしない社風をつくり、時間的にも、精神的にも安定した生活をすることが出来るように考えられた制度と評価できます。
今後の運用が楽しみです。地元企業でこのような取組が行われることは、繊維の地場産業が多い岡山だけに、繊維から始まり他業種への広がりが期待されます。
ISO26000に取り組む事はすなわち、上記のような悲しい事件を起こさないと同時に企業のリスクを減らし、社員の満足ひいては、顧客満足につながり、安定して経営が可能となります。
企業だけでなく、NPOにおいても労働の在り方を今一度見直すタイミングに来ています。
